レアジョブについて

【前編】代表に聞く-資格スクエアのこれまでと、未来の話

 

佐藤 郁夫:株式会社資格スクエア 代表取締役

パーソルキャリア株式会社を経て、資格スクエア事業を運営していたfreeeサイン株式会社(旧:株式会社サイトビジット)へ入社。2021年、資格スクエア社の代表取締役社長に就任し、レアジョブグループへ。

聞き手:話を聞くために雇われた外部の人。聞きたいことを聞く。

そもそも、佐藤さんってどんな人?

 

レアジョブの代表の中村岳さんと同じ開成中高の出身なんですね。

そうなんです!学年でいうと岳さんが一個上です。

開成…俗にいうエリートですよね。

岳さんはもちろん、THEエリートですよ!でも僕は…開成内の落ちこぼれ組だったので…。

え?!十分凄いのですが…。勉強が得意な子だったんですか?

小学生の時はそうでした。高学歴一家とかではないんですが、親が気まぐれで進学塾のテストを受けさせたら結構いい点数を取ったらしく「中学受験させるしかない!」となったようです。そこからは「開成から東大」のルートを、自分も親も信じて疑いませんでした。…が、根拠のない自信を基に大して勉強せず入試に臨み、普通に落ちました。

東大相手に楽天的過ぎませんか?

浪人して再度東大を目指すんですが、懲りずに怠けてました。でも夏頃からいよいよやばい、と必死に勉強したら、12月の東大模試で合格圏内のかなり上位の成績が出たんです。ここでまた「ほら。俺は本気出すとできちゃうんだよな…」って。

おもろすぎる。

そこからまた、本番の東大入試に向けて追い込み!というところで気が緩んで、さぼりました。で、案の定落ちました。さすがに2浪はできないのと、「東大に行くのが当たり前」みたいな極端な思考に陥っていた自分の世界を広げたいと考え、センター試験の得点で合格していた慶應大学に進学します。結果、充実した学生生活を過ごせたので、良かったです。

ほっ、なんとかいい話になりましたね。

いやぁ…僕は今でこそ自分のことが分かってきて、欲望を律することもできるようになりましたが、基本調子に乗ってしまうんです。大学入ってからも、学校の近くに二郎っていうラーメン屋があるんですけど、二郎食べて満足して、そのまま家に帰ったりしてましたからね。「はー、おなかいっぱいだなー」って。

親近感が湧きました。新卒で人材サービスのパーソルキャリア株式会社(当時の株式会社インテリジェンス)に入られたんですよね。

当時「やりたいことは見つかっていない」のに「面接は得意で内定は大量にある」という状況でした。面接官のタイプ別に学生時代のエピソードを出し分けしたりして「内定獲得ゲーム」というような感覚です。パーソルキャリアの選考も冷やかし半分で行ったんです。そしたら面接官がいきなり「君は履歴書通りの人間だね」って言うんですよ。「学歴もエピソードも良い感じに見えるけど、何かに本気になったことあるの?」と。ぐさっときました。受験も就活も、自分が中途半端にしか向き合ってこなかった負い目があったんです。当時パーソルはそれほど有名ではなかったですし、過酷な環境に置かれるらしいという話を聞いていたので悩みましたが、事業内容も社員も一番面白そうだと感じ、飛び込む決断をしました。

入社してからはキャリアアドバイザーとして、仕事を探すため過去に登録していた方にお電話して、改めて求人を紹介、転職支援することになります。

でも、いざお会いしてみたら2周り以上年上の方や、コンサル会社の凄い人だったりして「新卒の自分がこの人に何を言えるんだ…?」とか、生命保険の営業をしている方とお話ししていて、気づいたら自分が保険を契約しそうになってたりとか、色々ありましたね。

ただ、一つの仕事を極めている人こそ転職の知識は少ないので、社会人1年生の自分でも、相手の経験や希望を踏まえたキャリア提案ができれば介在価値があると考えるようになってから、仕事が楽しくなりました。

2年目に立ち上げメンバーとして建設業の人材紹介チームにアサインされたんですが、当時2006年頃は政府が公共工事を減らしており、建設業界は不況真っ只中でした。転職したい人はいるけど、求人がなくて、売上が立たない。その間に同期が華々しく活躍していき、日々悔しくて「上司は俺の才能を全然分かってない」みたいな…。くすぶってました。(笑)

そしたらリーマンショックが来て、全業界不況時代に突入したんです。これまで当たり前にやっていた「求職者のことを知り、想像力を働かせることで少ない求人の中で最適な提案をする」ということが評価され始め、相対的に自分の部署が一番成績が良くなりました。この経験で、ど派手な成果を出さなくてもいいんだ、地道でも信念に基づいて積み重ねたことは報われるんだ、という気付きがあったように思います。

佐藤さんの仕事に対する考え方のベースなんですかね?

そうですね。あと、人材紹介って営業と支援の狭間にあるサービスだと思うんですが、最終的には人の人生を左右するものなので、営業ばっかりじゃ信頼されるサービスにはならないし、信頼されないと生き残れない、とも考えていました。これもベースの価値観として今も大切にしています。

それから法人営業の責任者や拠点責任者などを経て、一番多い時は部下が100人以上いました。そうなってくると現場感は薄れて来るんですよね。仕事にやりがいはありましたが、もっと事業や組織を立ち上げフェーズから作り上げていくことにチャレンジしたい、とも思い始めていました。

資格スクエアへ!しかし前途多難…

 

それでサイトビジット(元資格スクエアの運営会社)に?

創業者の鬼頭さんとは、開成中学を目指す塾で出会い、そこからずっと数年に一度会って、近況報告し合うような関係でした。ある時彼が起業するという話になってから、チラシ配りを手伝ったり、ビジネスアイディアのディスカッションに参加したりしてたんです。その過程で「一緒にやろうよ」と言ってもらったこともありましたが、当初は断っていました。

なぜですか?

人生の大半を占める「仕事」を通じて、人が良き人生を歩むための手伝いがしたい、と考えていたからです。

ただ、良き人生を歩むために良い仕事につく、という土俵に、皆がみんな乗れるわけじゃないという現実も知っていました。人生のどこかで学歴や職歴が、一般的に求められるものからずれてしまうと、転職支援という手段だけでは「良き人生を歩む」手伝いがしづらい。そう考えたときに資格ってすごいフェアな世界だなと。老若男女関係なく、資格があれば道が開ける人はたくさんいる。今持っているスキルのマッチじゃなくて、スキルを獲得するソリューションの提供側になれれば、より自分のやりたいことに近づけるんじゃないかと考えました。

鬼頭さんに対するリスペクトも大きかったです。弁護士の立場を捨てて、ベンチャーを立ち上げて。僕はアントプレナータイプではないけど、牽引役が彼だとして、彼の右腕として彼にやれないことをサポートするとしたら、いい補完関係になれそうだと考えました。

社長の右腕的な感じで入ったんですか?

違います。契約社員です。

あはは!そんなことあります?

古い友人だからって特別扱いは良くないよね、というのが互いにあったので、役職ありきじゃなく入社して、成果で評価してください、ということです。

入社後はまず、社員が増えて整備が必要だった人事評価制度や組織体制に手を付けました。あとは鬼頭さんが「こっちに行くぜ!」と発信する後ろで「それって結局こういうことだよ」と、翻訳家になれるよう立ち回っていました。トップは何十歩も先の未来を見て発言するし、言葉自体もシャープじゃないですか。それはあるべき姿なんだけど、それだけだと組織は思うように動かないよね、というところの流れを良くする動きをしていたつもりです。

自分としても少し手応えが出てきたところで、資格スクエアの事業を任せたい、と鬼頭さんから言われました。嬉しかったですね。

順調ですね。

事業的には130~150%成長していましたし、これからもう一段飛躍するぞ、というタイミングでした。
しかし、その後しばらくして、とある出版社様からのご指摘を発端に、過去のテキストにおいて広範囲に他のテキストや問題集を無断で流用していたことが判明しました。

著作者様、出版社様が心血注いで作ったものを無断で流用したわけですから、許されることではありません。その時会社及び自身にできうることを考え抜き、対処いたしました。著作権者様、出版社様に寛大なご対応をいただき、結果として和解合意に至り、また、お客様には継続してサービスをご利用いただけることになりました。とはいえ我々に対するお気持ちの面においては、関与する全ての方々にご理解、ご納得をいただけたとは到底思っておりません。

実際に、お客様はこれまで通り受講できるとはいえ、やり場のない怒りや、不満を感じている方もいらっしゃいました。サービスが使えるか否かという問題ではなく、信頼ができない講座で勉強したくない、というお気持ちだったと思います。少しずつ積み重ねてきた信頼や期待を、自ら大きく裏切ってしまったことに対して、申し訳なさと悔しさで一杯でした。

社員の皆さんはどうでしたか。

動揺や不安による混乱を覚悟していましたが、まずは事態を収拾することに必死になってくれました。当時30名くらいの事業でしたが「仕事に熱くて粘れるいいやつ」にこだわって採用、組織作りをしていたこともあり、自然と結束した記憶があります。

お客様からのお叱りやご不安の声を受けていたCSのメンバーや、出版社とのお詫びの場で自ら弁護士として説明責任を果たしたいと言ってくれた講座企画のメンバー、受講を検討中の方に不正利用の事実を踏まえて誠意を持って向き合ってくれたセールスメンバーなど、あげればきりがないですが、踏ん張ってくれた社員には感謝しています。

この問題を経て、何か変化はありましたか?

まず、当時ご迷惑をおかけした関係者様には改めてお詫び申し上げます。

問題の原因は複数あります。
前提としてテキストの制作について著作権の観点を含めたガイドラインやルールが不足していました。また、制作は外部のパートナーに委託していましたが、制作の要件を伝える際に参考書籍等を例示することで細かな指示を省いていたことや、短い納期で依頼することが多かったことによって、不正な引用が生まれやすい環境を作り出していました。そして、それにもかかわらず完成したテキストの確認を怠っていました。

僕が資格スクエア事業の責任者に就任してから問題発覚まで、多少なりとも時間はありました。外部から指摘をいただく前に、僕自身がこの問題を明確に認識し、対処することもできたはずです。自らを振り返ると、ちょうど事業に勢いが出てきたタイミングで引継いだこともあり、事業の成長を急ぐことに気を取られ、これまでのフローの点検や守るべきことをしっかりと守る体制の構築に十分に目を向けることができていなかったと猛省しています。

本件を踏まえて、現在はテキストに限らずあらゆる制作物におけるガイドラインと入念なチェックフローを構築・遵守しておりますし、第三者による監査もしています。ただ、どれだけ万全を期しても100%はありませんので、とにかく細かいことでも気になれば都度確認、改善しています。当時ご迷惑をおかけした関係者様には改めてお詫び申し上げます。

 
 
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