レアジョブについて

レアジョブが、文教事業部を子会社化させた意味とは?抜擢された新社長に聞く

 

株式会社エンビジョン 代表取締役 杉山 朋也
 
人事コンサルティング、事業会社などで幅広い経験を経てレアジョブに参画。
その後、小学校から大学などの教育機関に対するオンライン英会話の導入のため、レアジョブ 文教事業を立ち上げ、サービス開発、アライアンス、営業を幅広く担当。 事業拡大のため、子会社としてスピンオフし、株式会社エンビジョン 代表取締役社長に就任。
 
2019年2月、レアジョブは文教事業部(=学校法人に向けたサービスを展開する部門)を子会社として独立させた。

一事業部を子会社化させる狙いや、それにともなう変化について、新会社の社長に抜擢された杉山さんに話を聞いた。

今回、事業部を子会社化することになった経緯とは?


 
事業部が設立されたのは2015年4月で、自治体・学校法人向けオンライン英会話サービスの提供を中心に、これまで走ってきました。

230を超える学校や自治体に、オンライン英会話サービスの導入を行ってきた実績があります。そのほか、増進会ホールディングスと資本業務提携をさせていただき、同社と連携しながら英語学習に関わるサービスの共同開発も行ってきました。実際に、数値を伴う高い成長率で事業を伸ばしてきたと自負しています。

一方、これまで個人や法人向けに事業を展開していたレアジョブにとって、“学校”は新たな分野のお客様。オンライン英会話サービスの提案をする中では、新たに気付いた点もたくさんありました。

例えば、小学生向けにオンライン英会話の授業を行うには、レアジョブがメインターゲットとしている社会人のお客様とは、全く違うアプローチを試みた方がうまくいくということ。

英語教育という観点から考えても、小学生には“感覚的に”楽しいと思ってもらう必要があるんです。ジェスチャーやアイコンタクトを多く取り入れて、「ファイヤーステーション!」と言いながら手で炎の形を作ってあげる。そういった身振りや表情が大切だったりします。

こうなってくると、講師に求められるものもまるで違ってきます。受講者の英語に対する適切なフィードバックや論理的な説明ではなく、“いちパフォーマー”としての能力が重要だったりするわけです。

文教事業部としてこうした経験を積んでいく中で、事業の枠から距離を置いてみる視点も生まれてきました。「一旦オンライン英会話サービスから離れ、自治体・学校にとって最も価値のあるサービスを考え直してみよう」という根本的な話し合いをする時間が多くなりました。

学校に向けたオンライン英会話サービス導入は、レアジョブにとって貴重なきっかけであり成長のアクセルでもあります。それを最大限に生かしながら、一旦、ゼロイチで学校に向けた最適なサービスを作り直そうというフェーズに入ってきたんです。

そうなると、ターゲットやビジネスモデルの異なるレアジョブ本体の一事業部でいるよりも、意思決定の自由度が高い別会社として独立した方が、サービス展開の方法や発想を拡大できるようになります。
従来よりも、自治体・学校向けに最適化されたサービスを追求できるようになるでしょう。

そういう経緯で、事業部を子会社化させようという決断に至りました。

実際に、何が、変わったのか?


 
一つは、子会社化に関する本来の狙い通り、よりお客様の視点でプログラムを作れるようになったという実感があります。

学校の先生って、子供達の教育に対してはとてつもなく熱い人が少なくありません。英語学習の方法に関しても、「改善大好き!」という想いが伝わって来るような方が多いんです。

実際、ミーティングには校長先生、教頭先生、英語の主任など大勢の先生が出られるのですが「今はこのように取り組んでいるんですが、もっと良い方法はあるでしょうか」「この課題には、もっとこんな方法が良いのでは?」と、具体的なご意見をたくさん頂きます。

こういった場でこそ、エンビジョンとして独立したメリットを発揮できます。我々はもはや“オンライン英会話サービスだけの会社ではない”ので、「とにかく相手の状況やニーズに合わせて、最適なものを一緒に作っていこう」というスタンスで、スピーディに話を進めることが出来ます。

極端な話、「“英会話”というパーツを取り入れたいけれども、既存の英語教育カリキュラムにどのように組み込めば良いか分からない」という課題があれば、その学校の状況に合わせて「英語教育のカリキュラム自体をレアジョブと一緒に作成しましょう」という提案も出来るんです。

もちろん、エンビジョンが提供するサービスをコアに据える前提ではありますが、相手の要望に対して、より素早く、適確に対応出来るようになったのは、組織として大きな前進だなと感じています。

あと、もう一つの大きな変化は、自分自身に関するものでしょうか。

事業部の代表とはいえどあくまでサラリーマンだった自分が、子会社の“社長”という立場に任命されたこと。これが、予想を遥かに超える重荷としてのしかかってきています。

杉山さん自身の中で、変わったこととは?


 

正直、社長になることの重圧ってここまでのものだったのか、と。

かつて「まあ、色々と経験していつかは社長になりたいですね」と気軽に言っていた過去の自分を殴ってやりたいです(笑) 社長に就任してからというもの、今まで経験したことのないほどのプレッシャーに、押し潰されそうになっています。

もちろん、これまでの仕事に緊張感がなかったわけではありません。自分で考えて、自分で取引先に提案して、自分で推し進めて…という全ての過程に責任とやりがいを常々感じていたのは事実です。

ですが、どんなに自分で考えて自分で進めていたとしても、それらは全て、究極的には社長だったり取締役だったり誰かしらの責任に守られていたんだ、と痛感しています。

意識してはいませんでしたが「これが上手くいかなかった時に、究極的な責任を取るべき人が自分よりも上にいる」というある種の安心感の中で、心地良く物事を進めていたんだな、と。

それが突然、「杉山さん、これ決めて下さい」と言われることが増えました。ここで自分が承認すれば、「杉山さんからオッケーが出た」という事実を紋所に、物事がドンドンと進んでいってしまうのか…と思うと、最初は震えましたね。意思決定ラインにおいて、一番上なのか二番目なのかというのは見える景色が180°違いました。

自分で経験してみて初めて、自分以外の多くの経営者を心の底から尊敬しました。厳しい判断をいくつも下し、部下達を導き、上手くいかなければ批判にさらされる。

実際、世の中の多くの人は“結果”しか知り得ません。レアジョブが学校向けに英会話ビジネスをするといっても、成功したのか失敗したのか、大雑把なことを知ることしか出来ません。

ダメだった時には、全て社長の責任です。社長は誰しも、本当の意味で“実力主義”の世界にいるんだな、と今こそ実感しています。経営者は皆、とてつもない重圧の中でやってきたんだな、と。

一方で、この言いようのないプレッシャーのおかげで、自分の中に今までと全く違う次元の“覚悟”が生まれました。

無我の境地と言えばいいのか何なのか分かりませんが、「何としてもこの事業を成功させたい」というシンプルな想い以外、今は何もありません。

自分自身の中に沸き上がっているこの感じたこともない強い想いは、ある意味、事業を子会社化させたことによる変化の一つなのかなと思っています。

これから


 
フィリピンでの子会社設立はあったものの、国内での完全な事業会社化は、レアジョブにとって初の試みです。

グループとして今後の将来像を考えていく上でも、今回の文教事業の子会社化は大きな分岐点です。レアジョブが掲げるグループビジョン “Chances for everyone, everywhere.”の実現に貢献するのが、第一の命題です。

加えて、会社的なコメントではなく個人としての考えを語るのであれば、社長一年目ではありますが「開き直ってやり切ろう」と思っています。

楽観的なのかドエムなのか分かりませんが、今の状況をどこか「気持ち良い」と感じている自分もいるんです。

今の自分が持っているものを全てぶつけて、事業を大きく成長させて、きっとスリリングであろうその過程を、全力で楽しみたいですね。