登場人物
東京大学 → NTTドコモ → 起業レアジョブ(創業者、現社長)
インタビューをする為に雇われた、外部の人。
Contents
社会人3年目から8年目くらいのモヤモヤ層問題
大企業に入社して数年が経ち、なんとなく「このままでいいのかな」とモヤモヤしている層というのは、どうすれば良いんですかね?どうも会社での仕事が人生の全てだとは思えないけども、しかしなんとなく毎日殆どの時間を会社で過ごし、何となく仕事をこなしている、みたいな人々です。
というか、お二人はそういう感じでしたか?
あ、まさにそういう感じでしたよ。大学院を卒業してなんとなくモバイルに携わりたいと思ってNTTドコモに入ったのですが、思っていた仕事と違ったこともあり、日々の業務へのモチベーションが湧かないことも多かったです。
あ〜、このままでいいのかな、と。
僕も新卒で入社した会社はマッキンゼーでしたが、数年が経って「このままでいいのか」という思いは強くなりましたね。モヤモヤの渦中で、日々、もがいていました。
僕は、この現象はごく自然なことだと思っていて、大企業だと自分の希望部署でないところに配属されてしまったり、自分のやってることが何に貢献しているのか見えなかったりしますよね。
で、最終的に、なんで自分は雇われているんだろう?と。
そうですね。確かに仕事に慣れてくることで日々の仕事に対してワクワク出来なくなってくるというのは、あるとは思いますね。
結局、そう思った時、人間には色んな選択肢があるわけで、僕は「転職」を選びましたし、中村さんは「起業」したということだと思います。
そうですね。
他にも、社内に異動願いを出す選択もあれば、環境は変えずに愚痴をこぼしながら過ごすという選択もあります。昼の時間は「地獄」もしくは「バイト」と割り切って、家に帰ってからの時間を大切にするというのも立派な選択肢です。
なるほど。
ですが、やはり一週間のうち7分の5は働いているわけで、その労働時間を有意義にするというのは人生を豊かなものにすることに直結します。だから満足を感じながら働ける、自分の「天職」を探すという努力は怠らない方が良いと思っています。
間違いないですね。
ただ、周りに起業したり転職したりしている人がいないと、余りイメージが湧かないものです。それで、何となく「どうしようか」「どうしようか」と思っているうちに時間だけが過ぎていきます。
大企業からの「起業」
大企業にいながら「起業」するというのは、一般的に、リスクが高いというイメージがありますよね。その辺は、中村さんはどうだったんですか?
起業家の中には、「会社勤めなんて意味ないからさっさと辞めてとにかく起業だ!リスクなんてねえ!」みたいな極論を言う人もいますが、「そこまで大胆になれるかああ!」というのが一般的な感覚だと思います。実際、僕もそうでした。
で、こういう場合にどうすれば良いのかと言うと、ただ単に、副業的に事業をスタートすれば良いんです。週末起業みたいな感じです。そうすれば大企業の安心感を感じながら、自分の事業を育てることが出来ます。
ですが、副業的にやって成功するもんなんですか?かけられる時間も少ないし、あまり副業でスタートした事業が上手くいったというのは聞いたことがないんですが。
たくさんありますよ!片手間でやるからダメなんていうのは思い込みです。というかRareJob自体が、副業でスタートした会社なので。サラリーマンが片手間で立ち上げた事業でも、立ち上がってから鬼のようにフルコミットすれば、たぶん、上場くらいは出来ます…。
ほお…。
ですが、さすがに毎日終電帰りで週末も疲れてグッタリ、というパターンは厳しいですね。会社に勤めていたとしても、毎日5時間くらいは事業に時間を使わないといけない。週末は土日とも事業に使いたい。
そういう意味では副業としてまともに事業を育てられる条件としては、若くて体力があることが第一の条件になると思います。あと、ホワイト企業で18時に帰れること。そして、独身であること。つまり、週末も自分の時間に使えるということですね。
なるほど。結婚してしまってると、副業的に週末起業するのは難しいんですかね?
結婚だから厳しい!とまで断定するわけではないですが、いずれにしても自分のために使える時間がそれなりにたくさんないといけないのは間違いありません。とにかく、「時間の確保」が必須なんです。
間違いないですね。ただ「既婚者の時間の確保」という点については僕もひとつアイデアがありまして、知人にもいたんですが、「育休」という制度を利用して起業するスキームがあります。
育休?
そうです。いま、世の中の流れ的に男性でも「育休」がとりやすいですよね。育休期間に、「時間の確保」が可能になります。
育休を何だと思ってるんだ、と怒られそうですが大丈夫なんでしょうか。
夫婦間の話し合いは必要になると思いますが、無理ではないと思います。育休中でも夫婦で家事や育児を分担して行えば、自分の時間を確保することもできると思います。そこで、ガッツリ事業を仕込めば良いわけです。で、事業が軌道にのればそのままそちらにフォーカスすれば良い。
軌道に乗らなければサラリーマンに戻るということですね。
その通りです。だからリスクフリーで挑戦できるわけですね。
起業するにあたっては、「なかなか良いアイデアがない」という話も聞きます。これはどうすれば良いですかね?
たしかに、普通に企業で働いていても「起業」のアイデアなんて、出てきません。
これに関しては、もう、とにかくやってみて試行錯誤しかないです。何もやらずに「いや〜良いアイデアがない、良いアイデアがない」とうなっていても一生良いアイデアは出てきませんが、ショボいアイデアでも良いから手をつけてみると、少しずつ良いアイデアになっていくものなんです。
アイデアにこだわり過ぎるというのは、何も動いてない証拠だと思います。アイデアというのはいきなり降って来るものじゃなくて、徐々に育っていくものだと思います。
レアジョブも、最初は違う事業を行っていたんですか?
ああ、そうですよ。英語の前は中国語英会話サービスを立ち上げたり、その前はもっとよくわからないビジネスを行ったり色々なことをしていました。だいたいの起業家がそうだと思いますよ。最初は、ワケの分からない仕事で良いんです。少しずつ良くしていけば良いじゃないですか。
起業したいけど自分には何の専門性もない、と考えている人もいるみたいです。これだけは負けないというものが無いから自信が持てないと。そういう場合はどうすれば良いですか?
だったら、それこそ「何かやる」しかないですよね。「いや〜何の専門性もない、何の専門性もない」となげいていても、何の専門性も身に付きません。今日から、今この瞬間から何かを始めるしかないです。
グウの音もでません。
何でも良いから一つくらい手をつけてみて、そのビジネスの分からないことを調べながら進んでいれば、気付いたらその分野には強くなってますよ。ほとんどの人は「やって」みないので、「やる」だけで、だいぶアドバンテージが取れます。専門性なんてそんなもんです。
一人で起業した方が良いですか?それともパートナーがいた方が良いですかね?
スタートアップは絶対に数人のチームでやった方が良いです。相性の良いパートナーを探すというのは、とても大事です。当時の僕も一人だったらここまで事業を育てられなかったと思う。
チームの強さは掛け算で決まります。分かりやすい組み合わせで言えば、「ビジネス × エンジニア」とか。とにかく自分と違う属性の人と組んだ方が良い。それによって、一人でやっているのとは全く違うことが出来る。
そうですね。一人でやるかどうかという話で言うと、「経営者の孤独」という問題もありますからね。一人でやってると、これで良いんだっけ?と迷うことがある。
そうですね。
常に話し相手がいる、というのは思った以上に大切なことです。常に良い精神状態にしておくことも大切な要素です。
周りに自分と属性の違うパートナーが見当たらない、という場合はどうすれば良いのでしょうか?同じようなサラリーマンしかないないという時には。
これはもう、能動的に動くしかないです。さきほどから元も子もないことを言っていますが、本当にそれしかないです。「周りにいない、周りにいない」となげいていても、残念なことに、周りには出てこないのです。
能動的に動くというと、具体的には、イベントを探して行く。もしくは大学や高校の尖っている人を探して会う。マッチングアプリ。街コン。相席屋。合コン。何でも良い。とにかく新しく誰かに出会うしかない。
ちなみに僕は高校の同期と久しぶりに会って、そのままビジネスパートナーになりました。それまで全然会ってませんでしたが。
なるほど。
人に出会うという意味ではプロボノとかもおすすめです。基本的にはボランティアなんですけど、意識も能力も高い人がけっこう集まっているイメージです。
あとはもう、友達が起業していたら、それを手伝いまくる、とかもありです。とにかく手伝いまくって、そこから何かを広げる。
ありですね。何でも良いから手伝う、というところから入って、何かしらの知り合いの幅を広げる。正直、何でもありです。
大企業からの「転職」
さて、次に、「転職」によって自分らしいキャリアを歩んでいく、という方法については、どのような考え方をすれば良いんでしょうか?そもそも、転職をする中で、「天職」と言われるような仕事に出会うことは、出来ますか?
起業をして自分の会社をつくらないと自分らしい仕事やキャリアを実現することはできないと思っている人がけっこういるみたいですが、そんな風に極端に考える必要はないと思います。
もちろん私と同じマッキンゼー出身の方の中にはDeNAの南場さんやオイシックスの高島さんなどベンチャーを立ち上げて大きな会社へと育てた方がたくさんいます。私は皆さんのことを尊敬していますが、私自身はもっと平凡な人間で、起業というリスクをとらず堅実な方法でキャリアを歩んできました。
それでも、いま、自分の天職と思えるようなやりがいある職についています。これはキャリア選択の中で、少しずつ人生をはみ出すということをしてきたからなんだと思います。
ちなみに、少しずつ人生をはみ出す、というのは一体なにをすれば良いんですか?
転職活動も勿論そうですが、今いる組織の中ではみ出すことも可能です。本業以外の分野に首を突っ込んでみたり、通常の業務と関係のないアクションを起こしてみたり、社内の起業制度などに応募してみたり、違う部署へ異動願いを出してみたり。色々あります。
こういった細かい試行錯誤の中で大切なのは、「三つの円」を常に指針にするということです。やりたいこと、できること、求められること。図示するとこうなります。
この図の、三つの輪が重なる部分に、「天職」と呼ばれるような仕事があります。
なるほど。
ですから、組織の中で動きをつけるにしても「やりたいこと」ばかり考えていても上手くはいきません。
あくまで自分の「できること」や、会社から「求められていること」を充分にふまえた上で、そこから出発して、「やりたいこと」を少しでも満たすためには、今、何をすれば良いのか、と考えるのです。
はい。
そして、その実現に当たっては、ただ日常の業務をこなしていく以外のアクションが必要でしょうから、そのために必要なスキルや、会社への提案を、自分なりに、具体的に考えていきます。
そもそも、「やりたいこと」が明確になってない、っていう場合はどうしたら良いんですかね?やりたいことが明確になってない時点で、そいつは、ダメですかね?
全然ダメじゃないと思いますよ。私がいま提案している、いわゆるミドルリスク・ミドルリターンのキャリア選択というのは、むしろこのような「やりたいこと」が明確でない人にこそ意味があるものだと思っています。
そもそも、自分のやりたいことが非常に明確な人というのはマイノリティじゃないかと思うんです。そういう方の場合には、自分自身で納得いく組織を立ち上げる方法が理想のキャリアへの近道になるでしょう。
はあ。
例えば私のマッキンゼー時代の同期には登山家としての顔を持ちながらコンサルタントとして働いている人がいました。彼は、8名の犠牲者が出たとある遭難事故をきっかけにマッキンゼーを退職し、「登山人口増加」と「安全登山の推進」を掲げた会社を立ち上げます。
彼は、自分自身の追求したいテーマが明確に、具体的に決まっていたパターンです。このような場合であれば、そのテーマで迷いなく起業できるでしょう。
はい。
ですが、多くの人はここまで自分のやりたいことが明確になっていないものだと思います。だいたい、「ぼんやり」してるんです。
そうですね。
それでも僕が常々思うのは、その「ぼんやりとしたもの」に向かって必要そうなスキルを獲得すべく少しずつ動いていくことも非常に価値ある行動なんじゃないか、ということです。
なるほど。
枡野さんは、どんなことを「ぼんやり」描いていたんですか?
私の場合、昔から、「何となくグローバルに活躍したい」と思っていました。何となくグローバルって、非常にぼんやりしてますよね。ですが、その為に自分に必要なスキルは何なのかと考えながら、「できること」「求められること」を少しずつ広げてキャリアを歩んできたんです。
できることを少し広げて、その分のスキルがつくと、その度に、また違う景色が見えていきます。例えば英語が話せるようになるだけで、新しいキャリアの可能性が生まれます。
なるほど。
具体的にこの仕事がしたい、ということが決まる前から、英語の勉強を始めたって良いんです。そうすると選択肢も自然に出てきます。そんなことを繰り返しているうちに、とある瞬間に、バチッ!!と自分にハマるような選択が出て来るんです。
少し長くなってしまいましたが、このあたりは著書「人生をはみ出す技術」の中で詳しく語っていますので、興味ある方はご一読頂ければと思います。
大変ストレートな宣伝、有難う御座います。
考え方の部分については、何となくイメージできました。ちなみに具体的に新しいスキルを磨くために転職活動をしよう、となれば、まず何をすれば良いですか?
まずは転職するにしてもしないにしても、現時点でキャリアとして自分の取れうる選択肢を列挙しないと何も始まらないですよね。現時点でどこに転職出来る可能性があるのかを知るところからスタートです。
そのためにまずは何をするべきかと言えば、転職エージェントと話をするしかないです。つまり転職活動をするにあたってするべきことと言えば、転職活動です。
色んな転職エージェントと話をしてみれば良いと思います。色々と話すことで自分の市場価値も確認することができます。
なるほど。
別に「絶対に転職する」というほどの心意気がなくても、転職活動をすることにはメリットがあると思いますよ。自分を客観視できるし、自分が日々どこに向かって進んでいるのかクリアになる。
たしかに。
「他の選択肢もあるけども今この会社を選んでいる」という捉え方をすると日々の仕事に対する考え方もけっこう変わります。話すだけならタダだし、どんどん転職活動をした方が良いです。
転職エージェント経由の転職活動以外にも、「天職」に辿り着く切っ掛けになりえる活動はありますか?
もちろん、あります。今男性用下着ブランドTOOTの経営者として仕事をさせて頂いているのも、「ご縁」があって紹介を頂いたからです。
私自身、昔から男性用下着ブランド会社の社長になりたいと思っていたわけではありません。世の中には自分の知らない仕事がたくさんあり、そのどれかが、実は自分にピッタリなものだったりします。
はい。
ただ、この「ご縁」というのは、ただ漠然と待っているだけではやってきません。自分から主体的につかみにいかないといけないんです。
つまり、自分が普段仕事をしている範囲の「外側」に、積極的にアンテナを張っていかないといけない。アンテナに面白そうなものが引っかかったら、積極的に首を突っ込んでいく。
一見仕事と関係なさそうなことに首を突っ込む、ということですか?
そうです。これは、今の仕事と直接関係がないものの方が良かったりします。例えば私は3社目のキャリアとしてライフネット生命で働いていましたが、入社のきっかけは仕事と関係なくコミットしていた、とあるNPO活動がきっかけでした。
それはサッカーでも、ワイン会でも、勉強会でも、ビジコンでも、自分の興味のあるものであれば、何でも良いんだと思います。自分の人生の内、何%かを、そういう「外側」のものに配分する。これが、何かしらの切っ掛けで自分のキャリアに影響を与えたりするものです。
長くなりましたが、この当たりについては非常に参考になる文献「人生をはみ出す技術」がありますので、是非参考にして頂ければと思います。
物凄い宣伝力ですね。
なんとなくですが、大企業でモヤモヤした状態から、少しずつミドルリスク・ミドルリターンの選択を続けて「天職」へと辿り着く方法についてイメージが出来て来たような気がします。
よかったです。しかし、私のように普通の人が現実的な選択の末に「天職」につく、ということに関しては、まだまだ語りたいことが山のようにあります。
どんなポイントがあるんですか?
例えば、スキルの磨き方についての話です。ぼんやりと存在する「グローバルに戦いたい」とか「新規事業に携わりたい」といったイメージに向かって、自身のスキルを高めていくことの大切さを先ほど説明しました。
しかし、ではどのようにスキルを磨いていけばいいのか。自分のスキルというのはどのように評価され、どのように希少性を発揮するのか。
なるほど。
あと、そもそも論なのですが、このように少しずつ人生を「はみ出して」いくことを私が推奨しているのは、自分自身がそれによって満足いく仕事につけた、ということに加えて、社会全体の大きな流れがそれを後押ししているということもあります。
なるほど。
つまり、上司の言いなりになって自分自身をはみ出さずに毎日をコンサバティブに過ごすことが、むしろリスクの高い選択になってきているということです。このあたりも、本書「人生をはみ出す技術」にくぁwせdrftgyふじこlp
企業勤めにモヤモヤした若手が今日からできる具体的な活動(アドバイス)、まとめ
〜 起業編 〜
アドバイス1:リスクが嫌なら、副業的に起業すれば良い!!
アドバイス2:副業的に起業できる条件は、体力があって、ホワイト企業に勤めていて、独身であること!だ!!
アドバイス3:結婚していても「育休」を利用することで起業の準備ができる!?
アドバイス4:起業のアイデアがなければ、まずはショボいアイデアでも手をつけてみるべし!!
アドバイス5:専門性がないなら、それこそ嘆いてないで、さっさとなんかやれ!!今日からやれ!!今やれ!やれ!
アドバイス6:自分とは違う属性のパートナーを探せ!!掛け算でチームの力を引き上げろ!!
アドバイス7:周りにパートナーに出来そうな人がいないなら、出会え!!出会い方は無限だ!!
〜 転職編 〜
アドバイス2:「やりたいこと」「できること」「求められること」という枠組みを意識しながら、必要なアクションを起こせ!!
アドバイス3:「やりたいこと」は明確になってなくて大丈夫!まずは、ぼんやりしたイメージに向けて、とにかく「できること」を増やせ!!
アドバイス4:転職を考えているなら、まずは、つべこべ言わずに転職エージェントに会って話を聞くしかないぞ!!
アドバイス5:よくよく考えると転職活動には「得」しかないぞ!!!しろ!!!さっさと、しろ!!!
アドバイス6:「外側」にアンテナを張れ!!! それがいつか、何かしらの形でキャリアに良い影響を与えるぞ!!!!
アドバイス7:というかまずはこの本を買え!!「人生をはみ出す技術」
以上