登場人物
日本にて中・高の英語教員免許を取得後、マレーシアにて教育機関を立ち上げ、13年間代表取締役として運営を行う、2004年日本の大手教育機関に売却後、日本に帰国。
帰国後は株式会社バンダイへ入社し、英会話教材の開発等に従事。2011年、ベルリッツ・ジャパンへ入社後、大人のビジネスパーソン向けの事業部でのプログラム開発、キッズ・ティーン向けの事業部門の運営を行う。2014年10月よりレアジョブへ入社。
インタビューをする為に雇われた、外部の人。
下又さんは海外で教育機関を立ち上げてそれをバイアウトした後、日本の教育業界の第一線を点々とし、ベルリッツ在籍時には世界のトップ社員の1人にも選ばれて… と “物凄い経歴をお持ちの物凄い方” だと伺いました。
突然ですね…(苦笑)
下又さんが日本と海外の教育機関を経験して、何を感じたのか、なんでレアジョブに来たのか、レアジョブで一体何をしようとしているのか、ということが気になっています。
教えてもらうことはできますか?
はい、問題ありません。まずは僕のキャリアから…ですかね。
学生時代
岩手県で生まれたのですが、両親が教師をしていたこともあり、小中高大と、ずっと公務員になるべく生きてきました。「とにかく公務員だ!」という家庭、教育だったんです。自分が公務員を目指すことに、疑いを持ったことはありませんでした。
それが、運送業の社長をしている叔父さんの子供に家庭教師をしていた時、叔父さんの社長としての仕事を横で見たり、叔父さんの読んでいた経営に関する本を読んだりする時間が出来たんです。公務員とは全く違う生き方、働き方に、ある種衝撃を感じたんだと思います。
海外への憧れというのも元々あったので、それが合わさって、「海外に行って起業したい!」と漠然と思いました。大学生の頃です。
公務員としての教育からの、反動だったんですかね。
そうかも知れないですね。それで、自分で会社をやりたい、海外でビジネスをするんだという気持ちが強くなり過ぎて、公務員の採用試験を直前にブッチしたんです。
知人に紹介して貰ったリクルートという会社に、そのまま勢いで入りました。起業しやすいと聞いたので(笑)
抑えきれない思いが、爆発したんですね。
当時のリクルートは本当にドメドメの営業が多くて、僕がやっていたのも正に、そういう地道な営業でした。マンションのベルを片っ端から鳴らしての営業です。全国一位をとって、武道館で表彰されたこともあります。
凄いですね。
ただ、「リクルートは海外に支店が無い」ということに気付いたんです。入社して少し経ってからですが。これじゃあどんなに頑張っても海外で起業という自分の夢は達成できないぞ、と。
それで、1年くらいリクルートで働いてから、辞めました。1991年のことです。90年代前半は、「今後はアジアの時代だ!」と言われていて、自分も漠然とアジアをベースとした起業ができないか?と考えていました。それで、取り敢えず海外に出ました。
リクルートを経て、海外に出て起業
ビジネスのチャンスを探していたんですか?海外で。
そうですね。どこかで、何か出来ないかな、と。
シンガポールにコネクションがあったので行ってみたのですが、当時からシンガポールは結構発展していて、20歳前半の若造が起業するのは敷居が高く感じました。
ああ、アジアでの起業と言っても簡単じゃないなと思い、ふとマレー鉄道という列車に乗ってマレーシアに行ってみたところ、これがマレーシアって当時、本当に何も無い場所で、シンガポールと全然違ったんです。発展途上だし、色々なインフラも整備されていない。
余りにも何も無いので、逆に、至る所にチャンスが転がっているように見えました。「あ、こんなペーペーの自分でも、ここなら何かできるんじゃないか?」って直感的に思いましたね。それでマレーシアの首都のクアラルンプールに向かって、そこでビジネスをすることにしたんです。
でも、いきなり見知らぬ国に入ってビジネスするって言っても、何をするんですか?全くイメージがつかないのですが。
自分が日本で取得した教員免許を持っていたので、マレーシアに住む日本人に向けた塾みたいなものを開けないか、と思ったんです。1992年後半です。
たった1人で、ですか?
知人に紹介して貰った現地人と2人で、ですね。塾を立ち上げるに当たって、国に色々と申請しないといけなかったんです。
偶然、そのパートナーがマレーシアの教育省をちょうど定年退職した、役人あがりの人間だったので、彼に膨大な申請書の対応を全てお願いしました1993年に、塾を立ち上げることが出来ました。
それが噂に聞く、「下又さんが海外で立ち上げた塾」だったんですね。
そうですね。それから、なんだかんだマレーシアに13年ですよ、13年(笑)
ふらりと立ち寄ったマレーシアに、13年!!
20代をマレーシアに捧げたわけですね…!
はい(笑)一方、自分の中に、どこかで日本に帰って仕事がしたい。日本のためになるような仕事がしたい、というのがずっとあったので、2004年にその塾を日本の大手予備校に売却して、日本に戻ってきたんです。
その頃にはマレーシアの日本人向けの塾では一番大きくなっていて、生徒は300人くらいいました。
事業を売却し、帰国
塾も売却して纏まったお金もできたし、日本に帰ってきてからは、のんびりダラダラしていたんですかね、やっぱり?
それが、全くしなかったですね(笑) 帰国後は一度、経営というものを体系立てて学びたいと思ったんです。そこでグロービスに1年弱ほど通いました。
私だったら一旦温泉巡りでもしますが、そういうわけにもいかないんですね。
そうですね(笑)
そこからバンダイにヘッドハントされて、新規事業部門の立ち上げを中心に、子供向け英語教材の開発なんかも行い5年、リーダーシップ教育を目的としたNPOに1年、そしてグローバル人材育成を行う部門の担当としてベルリッツに4年、そしてレアジョブです。
「英会話スクール」
バンダイから、ベルリッツ、そしてレアジョブ、という流れは、やっぱり日本人の英語力というか、英語教育への興味が強かったということなんですか?
そうですね。海外から13年間日本を見ていると、日本人は能力も高いのに英語力が不足しているために圧倒的に不利な状況になってしまっている。それを、どうにかしたいなと。
ベルリッツという英会話スクールの会社から、レアジョブというオンライン英会話の会社に来たのは、どういった理由なんですか?
まず、ベルリッツというのは実際に、非常に高いクオリティの授業をしているな、と思っていました。英会話スクールの最大手だけあるな、と。お客さんも、色々と考えて色々と巡った結果、「やっぱり最後はベルリッツしかない」みたいな感じで来るんですよね。期待も大きい。
はい。
でも、ご存知の通り、授業料が高いんです。8,000-9,000円/授業という単価になっている。これは、土地代だったり広告費だったりと言った兼ね合いで、どうしてもこうならざるを得ないのですが。そうすると、さすがに経済的な観点から考えて、月に10回も20回も来れないですよね。せいぜい、週1が限界だと思います。
まあ、5回行って4万円/月なので、相当な富豪でないと、行きまくるというのは難しいかもしれませんね。
月に4回しかレッスンを受けられないということは、逆に考えると、残りの月の26日は基本的に何もしていない訳です。英語は学問ではなくて、実技科目です。実技科目は、毎日少しでも継続してやらないと身に付かない。ピアノが上手くなりたかったら、毎日少しでもピアノに触れることが必要なのと同じです。
日本の英語学習者には圧倒的に英語に触れる量が足りないんです。絶対に足りない。英語っていうのは、やっぱり慣れが大事なんです。これを無視してはいけない。
その点、オンライン英会話っていうのは、英語に触れられる量に関しては、間違いない。じゃあ、そこに英会話スクールのクオリティを導入出来れば、物凄いことになるんじゃないかなと思ったんです。
「英会話スクール」と「オンライン英会話」の、交わるところ
オンライン英会話に、英会話スクールのクオリティを導入、ですか。
そうですね。
オンライン英会話は気軽に英語に触れられる機会を安価に提供できるという面では破壊的な力をもっています。なので、2008年以降からマーケットが急激に成長しました。一方、英会話スクールが100年かけて培ってきた指導に関するノウハウにはやはり価値があり、それをオンライン英会話に導入できれば、物凄いことができるなと。
なるほど。
そして、オンライン英会話の質を向上させたら、さらにその次の段階としては、「第三世代の英会話スクール」を創造してみたいと考えていました。
第三世代の英会話スクール?
私は、第一世代はいわゆる駅前に多くみられる英会話スクールであり、第二世代がオンライン英会話、そして第三世代が、「ブレンデッド」と考えています。これは、いわゆる第一世代の英会話スクールと、第二世代のオンライン英会話の利点を掛け合わせたものですね。
今後、このブレンデッドが英会話学習者の主流になっていくと考えています。
その、ブレンデッドというのは、具体的に言うとどういうコンセプトなんですか?話が次々と展開していくので圧倒されております。
はい、よく聞いて下さい。英語の学習には、「インプット」「練習」「経験」の3つの部分が必要であり、わかりやすい「インプット」の例では文法や単語の学習があります。まずは十分なインプットを行うことが重要です。
一方、「練習」の部分は「インプット」した部分について、無意識に反応できるレベルで定着させることが重要です。これは、相手が英語で話した内容を英語のままで聞いて、考え、話すというスムーズな会話に必要な力です。この「練習」を強化するためには、とにかく英語に触れる量を増やすことが何よりも重要です。この部分はオンライン英会話が得意とする部分となります。
そして、「経験」です。これは実際に英語を使って何かしらの目的を達成するという経験の事で、実際に英語を使ったという経験を積むことで、自分の習った英語が腹落ちして自分のものになっていきます。
これらの、「インプット」「練習」「経験」の3つの部分はスクール英会話、オンライン英会話のどちらかだけでできるものではなく、両方の利点を上手く組み合わせて新たな仕組みを作ることが必要となります。
オフラインの強みに、立ち返る
オンラインとオフラインで、得意な分野が全く違うわけですね。
そうですね。あと、英会話スクールのようなオフラインのもつ良い要素として、「モチベーションの管理」というものもあります。これも無視出来ません。
モチベーションの管理、ですか。
人前で話す、とか周りに仲間がいて切磋琢磨する、という環境自体には、やはり価値があるんですよね。
1人でオンライン英会話をやり続けて、たった1人で他に誰との接点もなく高いモチベーションを維持するというのは意外と難しいことなんです。
例えば、今ライザップが流行ってるじゃないですか。ライザップで実践している運動のメニューというのは、実際は特別なものではないんです。しかし、ライザップはモチベーションの管理がとても上手くて、そこにあのサービスの価値が詰まってるんだと思います。
英会話にも全く同じことが言えて、英語が話せるようになる為には、高いモチベーションを保つことが必須です。その為に、やはりface to faceでの取り組みというのが効果的なんです。隣の人よりも話せるようになりたいというライバル心をかき立てるとか、仲間と一緒にやっているんだという仲間意識に、意味があるんです。
オフラインにも様々な目に見えない価値があるんですね。
そうですね。そのブレンデッドというゾーンを目指して、今、レアジョブでは、レアジョブ本気塾と言った、オフラインの側面を敢えて強めたプロジェクトも始動させているんです。
なるほどですね。
事業を推進する場としてレアジョブを選択した理由
ところで、そのブレンデッドという英語学習の新たな世界を目指すのであれば、ベルリッツですとか英会話スクールの会社にいながら、その会社の中でオンラインの方面の良さを取り入れて行くという方法もあると思うのですが、それに関してはどうなんでしょうか?
なぜわざわざレアジョブに来てブレンデッドを目指すことにしたんですか?
それは凄く良い質問で、どちらから攻める方が簡単か、という観点から考えました。
実際、この英会話という領域においては、オフラインでやっている会社がオンラインの領域に進出するのはとても難しいことだと感じたんです。それは、オンラインをやるにあたって、技術的なハードルが極めて高いからです。
一方、オンラインの領域をドップリやってその技術がある状態で、オフラインの良さを取り入れて行くという試みは、非常に簡単で現実的だと思っています。これが、僕がオンライン英会話の会社を選んだ理由です。
なるほど…。ちなみに、オンライン英会話の会社って他にいくつかあると思うのですが、レアジョブを選んだ理由は、何なんですか?
それはシンプルに、オンライン英会話の会社の中でレアジョブの規模が一番大きかったからです。ベルリッツを選んだ時も同じ理由です。
僕は、社会に最も大きい影響を与えるにはどうすれば良いのか、というところから自分の思考をスタートさせるので、自動的にそこは規模の大きい会社になるということはあります。
「理念が〜」とか「人柄が〜」とかが来るかと思ったんですが、予想以上に分かりやすい理由なんですね(笑)
そうですね、もちろん、人や雰囲気も大好きですが(笑)
下又さんが教育業界の第一線で働き続けた結果レアジョブに来た理由が、よく分かりました。なんか、物凄いことが出来るんじゃないかと思えてきました。今日はありがとうございました。
いえいえ、また何でも聞いて下さい。