新しい教育

レアジョブの技術的・データ的側面でのポテンシャルの話をしよう。語学学習のどんな未来を僕らは作れるか?

 
 

EdTechという言葉が誕生してから久しいが、教育業界は、他の業界と比較して、テクノロジーの導入や活用が遅れている。教育でのテクノロジー活用は、どんな風に進んでいるのか。レアジョブの技術・データ側面の活用によるプロダクトの未来とポテンシャルの話を、今回の記事ではお届けします。英語学習の未来、どんな未来を私たちは作れるかを、3人に語ってもらいました。
 
 

中村:エンジニア出身のレアジョブの代表取締役社長 
山田:2代目CTO
山本:EdTech Labをリードする機械学習エンジニア
聴き手:外部の人
 
 

EdTech Labって、何やってるんですか?

テクノロジーを活用して、教育の価値最大化を目指すR&Dプロジェクトです。レアジョブのサービスのみならず、教育全体のアップデートにも貢献していく未来を描いて発足しました。社長である中村さん直下のプロジェクトとして2017年にスタートし、いろんなR&Dのプロジェクトを進めてきました。2020年6月には、AIによる自動採点化に成功した「PROGOS」をサービスとしてリリースしています。

今は、私から、CTOの山田さんに引き継いでもらって、技術本部として新しい研究や開発に取り組んでいます。

具体的には、どんなことをやっているんですか?

より多くの確かなデータをもとに、教育・学習効果を実証する研究を行い、教育に関わるあらゆる領域における技術の実用化を目指しています。研究を研究のままで終わらせず、実用化・サービス化までもっていくところが、中村さんの方針でしたよね。

はい、実用化するサービスを作らないと意味がないです。もちろん、百発百中で開発するのは難しいですから、結果として実用化できないものやニーズがないプロダクトが生まれることもありますが、そのプロセスがムダにはならないと思っています。教育業界の未来をつくるには、テクノロジーやデータの活用が必須だと考えています。なので、立ち上げ当初のR&D室は、全員エンジニア、特に機械学習や自然言語処理が得意なメンバーで構成されていました。レアジョブの持つ英語学習者のデータから、今まで気づいていなかった気づきや課題を発見し、いろいろトライアンドエラーをしてたよね。

 

 

へええ。教育の未来って、どんな絵を描いているんですか?

英語教育の領域の未来だと、たとえば体にチップを埋め込んで、寝ている間に英単語や文法がインプットできて英語が話せるようになる…という日が、いつかは来ると思う。実現できたら1000万円でも売れるんじゃないかな?究極、勉強しなくても言語の壁を超えられるようになる未来は実現すると思う。道筋は、見えてないけどね(笑)

もう少し現実的なところでいくと、学習のインプットとアウトプットのデータを解析して、自分の弱点部分を把握する。そこを学習して伸ばしていけば効率的にレベルアップができるという未来は、おそらく近未来と言っていいと思います。解析の精度を上げていけば「この学習をした人は、この部分が伸びる」といった証明できるようになるので、それをレコメンドしていく。これも、実現させるのはだいぶ難しいんですけどね(笑)

はい、簡単ではないです。(笑)

あとは、今は英語の発話データを分析していますが、英語力以外にも読み取れるものがある。たとえば、複数人の会議でのファシリテーションの上手さとか、です。これを学習に落とし込むとなると、たとえば「座学で学んだファシリテーションの3つのポイントのうち、2つは実行できていますよ」とフィードバックする。それで、今まで評価しづらかったファシリテーション能力をアセスメント(測定)し、レベルを可視化できる未来も訪れると思います。

 

 

今、日本社会では、ジョブ型雇用への移行が普及しはじめていますが、ビジネス環境やプロダクトサイクルのスピードの急速な変化に対応するためには、ジョブよりもさらに細かい、機能定義・スキルを把握し、それを開発していくことの重要性が増しています。

そうですね。レアジョブでも日本とフィリピンのエンジニア合同MTGの時、英語能力も大事ですが、リードするスタッフのファシリテーションの上手さで、MTGのアウトプットがだいぶ変わると実感します。日本人だけのMTGより難易度が高いし。

そう。そういう実体験を通して、人って「では、どうやったらファシリテーション力って上がるのかな?」と気づき、学習を開始しますよね。
ちょっと話は変わるんですけど、この“学習するきっかけ”をいかにして提供するか、ということにも最近興味があるんです。

えっと…?

英語学習って必要だと気づいた人はやるけど、その気づきのきっかけをどこで与えられるか?も重要だと思うんですよね。たとえば、多くの企業ではTOEIC®L&Rのスコアで英語力を評価されることが一般的かと思います。一方で、就職活動で人気の商社。外資系企業や商社の面接では、英会話力を図る英語面接があることも多いと思いますが、英会話力のスキルは、面接官の主観で判定されていることも多いです。

商社の入社試験で、どのくらいのレベルの英会話力が必要だとか、蓄積されたデータが開示されていれば、学習するきかっけになります。英語力をさらに細分化した「英語スピーキング力」のスキルの可視化がもっと進めば、学習をした結果として目指すべき会社に入社できる可能性が上がる…というキャリアパスが見えてくるようになるかもしれません。

確かに、TOEIC®のL&Rで900点というスコアを持っているのに、英語面接を受けた結果、お祈りメールが届いた友達がいますね。

僕は、学習自体のコンテンツ以外にも”勉強を続ける”ことが重要だと思っていて、それを科学的に考えることにも興味があります。受講者の行動を見ていると、学習から離脱しちゃう人も多いんですよね。仕事が忙しくなった、子どもの育児で忙しいから、Netflixに誘惑されて…とか、理由はさまざまです。すべての教育事業者は、”勉強は続かない”という大きなテーマに挑んでいるようなものです。モチベーション維持の仕組みづくりはもっとやりたいな、と。

山田さんは、学習を続けられるタイプですか?

学習せざるを得ない環境に飛び込んで、逃げられないようにして、一気に追い込むパターンです。レアジョブに参画して、フィリピンのエンジニア組織を見てね!となってから「英語やらないと…」となりました。

なるほど。僕は、自分でコミットさえすれば続きます。逆にできないと思うものはコミットしないです。

勉強を続けるために、習慣を科学することは、学習コンテンツと同じくらいとても大事。友達と一緒に勉強する人、1人で走り続けられる人、目の前ににんじんをぶら下げられてやる人。いろんな性格の人を刺激するようなものも、データ分析から、提案していくことをやっていきたい。

持続に何が効くのかは、いろんな角度で検証できますよね。他人と競い合ったり、同じタイミングでスタートした同属性の人とのコミュニティも習慣の持続には効くと思うな。周囲の人がどうやっているかを知って、続けなきゃとなるひとも多いと思います。それ以外にも、発信し続けることで、外部からフィードバックを得られることで続けたり、ご褒美があったり、アプローチは多数ありそう。

僕は、英語学習でいうと、教える側の講師の体験も良くしてあげたい。教える側も人なので、個性があり、得意不得意がある。たとえば、レッスンでついついしゃべりすぎちゃう講師に不満を抱く受講者と抱かない受講者がいます。リスニングを強化したいと考えている受講者だったら、講師がたくさんしゃべっても満足度は高いですが、一般的には、満足度が下がるでしょうね。受講者からの会話に反応せずに次のパートにいっちゃうとか、カメラを見る回数とかも、受講者の満足度にかかわってきます。

良い教え方とは何かをちゃんと解析し、講師トレーニングの研修内容をアップデートしたいですね。それで、レッスンをうまくリードする方法を、講師がセルフランできる仕組みをつくりたい。受講者の英語力レベルに応じて講師のあるべき姿を可視化してあげることで、サービス品質も良くなると思う。

日本のグローバル進出がどんどん進んでいけば、英語学習ニーズはさらに多様化していく。それに合わせて、講師へのニーズも多様化してくるよね。

そうなんです。ビジネスの交渉で英語を使っている人には、ビジネスの交渉で必要なレベル・シチュエーションで使われる単語や熟語や種類を利用してレッスンを提供する講師が求められます。そんなマニュアルを人力では作れないので、そこはやはりデータを司るエンジニアの出番です。

 

 

機械学習エンジニアと自然言語処理エンジニアにどんどん参画してもらいたいです。

そういえば、冒頭に出た「PROGOS」は、イギリスのEdTech のAwardで受賞したとか。

そうです。我々は、海外進出も積極的に行っていきます。

教育サービスって国ごとに違うと思いますが、海外でも通用するんですか?

根本の学びは、変わらないです。英語学習はどこの国も同じ。ただし目的は変わります。アジアだと、小学生は英会話、中高生になると良い大学に入るために変わり、それに向けた対策が一般的になります。

グローバル展開で問題が起こるとしたら、ナショナリティがあるものはローカライズしないといけない、ということですね。たとえば、英語の発話量の視点だと、文化レベルの差が出てきます。先ほど話題に出た「話しすぎ」という点で言えば、日本人は主張が苦手な人が多いので、よくしゃべる国の人と比較すると、発話量自体が少ない。だとすると、データの活用の方法も国ごとの特性に合わせて変化させないといけないですね。

日本は人口が減っているので、経済成長を維持するためには外貨を稼がないといけない。そういう意味では、グローバルに活躍する人材の輩出はどのような企業においても至上命題になってきています

レアジョブでは「グローバルに人々が活躍する基盤を作る」ことを目指して、英語学習に以外にもグローバルリーダー育成やキャリアにつながるように、人のスキルの可視化を進めていきます。個々の能力をスキルベースで把握できれば、学習によって適切なスキルを新たに獲得することもできる。それによって、自分が目指すキャリアを選択できる人が増えたらいいなと思い、R&Dを推進していきます。