2017.11.10教育関連のアピール | 

Edtechは教育を変革できるのか。個の時代の加速と教育の多様化の実現へ − 日本初開催のグローバルカンファレンス「Edvation x Summit 2017 」レポート

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新しい教育の選択肢を知ること、既成概念にとらわれない教育イノベーターを生み出すことを目的とし、11月5(日)・6日(月)に「Edvation x Summit 2017」が海運クラブ国際会議場と千代田区立麹町中学校で開催されました。講演やパネルディスカッションだけでなく、各企業の体験ブースやワークショップも豊富で、小学生のお子様や保護者の方、麹町中学校の生徒や地元の方々も参加するなど、まさにEducation×Technologyが融合したイベントとなりました。

全米最大の教育イベントSXSW EDUの創業者であるRon Reed氏や、EdtechXEuropeの共同創業者であるCharles McIntyre氏をはじめ、世界各国からEdtech界の著名人が多数来場し、日本初開催とは思えないほど国際カンファレンスの空気感が、初日のBreakfast Meet upから出来上がっていました。

初日は本イベントの主催者であるデジタルハリウッド大学大学院教授の佐藤昌宏氏と、元Google米国本社副社長の村上氏の講演からそれぞれスタートし、国内外のEdtech領域のサービスを提供する事業会社のCEOや、イノベーティブな取り組みを学校現場で推進する校長先生、教育革新を進める自治体などが次々と登場しました。

Appealでは、3 つの視点にて、イベントレポートします。
▼テクノロジーを教育にどう活用するか
▼21世紀の教育と求められる人材
▼学校教育の現場で今おきていること

テクノロジーを教育にどう活用するか

IT 教育は、正解を教え込むのではなく、考える人を育てる

元Google米国本社副社長の村上さんの「AI・IoT×教育 近未来のカタチ」

「マシン・ラーニング、ニューラルネットワーク、ディープ・ラーニングなどの技術的な発展により、AI(Artificial Intelligence)やすべての電気機器がインターネットに接続される IoT が社会で実用化されていく中で、教育のカタチも変わらなければならないフェーズに来ている。

今の電子教科書は、教科書の電子読みであり、それではだめ、テキスト、動画、静止画を縦横無尽、順不同にできるものが望まれ、本来の電子教科書によって、 eTeaching ではなく、 eLearning に変えていく。 一方通行で教えるのではく、自ら考え、多様性を承認し、正解のない問題に取り組むマインドセットとスキルセットが必要になってくる。

テクノロジーの発展によって人間の仕事が代替されると言われているが、人間はテクノロジーをきちんと理解し、利活用をしていける人材を育てていくことが重要。」と村上さんは語った。

テクノロジーが進化を遂げていく中で、社会の在り方自体が変わり、人間の役割自体も変わっていく。教育自体も決してテクノロジーを否定するのではなく、きちんと理解し、向き合い、うまく使いこなせるマインドを持った人材を育てていけるよう変化をしていかなければならないと感じた。

生徒には時間がない、学習者の探究心を育成するedomodo

Edmodo 先進プロジェクト ディレクターHannes Marais 氏「AI は情熱的な学習者を育成できるか」

Edmodoは、世界最大の教育SNSで、生徒と先生がつながるだけでなく、先生同士が教材やカリキュラムなど学習コンテンツをシェアできる、グローバルな教育ネットワークである。

「生徒に教育コンテンツ動画を共有しているが、世界中の視聴データを機械学習のアルゴリズムに乗せ、多くの生徒が面白いと思ったら、記憶し、推薦する仕組みをもっている。

生徒は、自分の関心があるものを探究しようとする。ある生徒は、夕方から視聴し始めて、工学→科学工学→政治→心理学とみて、就寝したことがわかる。生徒の関心を引き続けることで、生徒自身がどんどん探究することができ、結果として学ぶことができる。また、小学校入学前から小学校の高学年、それぞれの学年で何に興味があるのか、ホットなトピックは何なのか、様々なデータでみているので、AIを利用して、提案していくことにより、情熱や好奇心を維持している。

課題は、生徒に、時間がないこと。生徒たちは家に帰ってもいろんなことをやらなくてはならず、実際にEdmodoユーザーの20%は、平均利用時間が20秒以下というデータも出ている。8,400万人のユーザーデータを活かし、最適化されたリコメンデーションシステムによって生徒に関心を持たせ、探究し、より深く学ぼうとする意欲を引き出そうとしている。このシステム自体が生徒の学習にとって良い影響を及ぼすのか、大きな変化を起こさないかもしれないが、Edmodoを通じて実験し続けている。」

ただ単に、テクノロジーを利用して学習を最適化したサービスを作っても、生徒の学びには繋がらない。関心→探究→学習のサイクル作りをする必要があることをEdomodoは示唆している。

21世紀の教育と求められる人材

個性がある人が求められている

60 歳でパソコンに出会い、80 歳でプログラミングを始めた、82 歳の iPhone アプリ開発者 若宮正子さんと考えるプログラミング教育

スマホを使うシニアが増えている中、シニアが楽しめるゲームアプリが少ないと、自分でiPhoneアプリを作った若宮さん。82歳にしてApple米国本社でTim Cook氏と面会し、世界的にニュースに取り上げられるなどして一躍有名になった方だ。

「60歳でパソコンに出会い、シニア向けパソコン教室をスタート。シニアの方々が楽しみながらパソコンを学べる方法を模索し、エクセルを活用したアート作品の制作を考案。その後、iPhoneアプリ開発(Swift)を学び始め、シニアが楽しめるゲームアプリ「hinadan」をリリース。シニアのスマホの使い方は若者のそれとは違うため、ニーズを理解したうえで何を作りたいかを決め、教えてくれる先生を探し、リリースにつなげることができた。

AI、ロボットが活躍する時代において、人間の価値は『創造性』であり、自分自身も何歳になっても創造的でありたいと思っている。そのためには社会が多様性に寛容になり、就学・教育の多様化が求められる。学校で扱いづらいとされている個性がある生徒が息苦しい思いをしがち。インターネットの発達によってさまざまな学びの在り方が可能になる中では、学びたいことを教えてくれる先生を探すための出会いサイトがあると良いし、子供が気軽に利用できる機器やwifi環境の整備などがもっと必要だと思う。」

行動することで、自らニーズを作り出す人材

英語教育について、実績データを交えながら、葛城氏(ReDucate社長)、平本氏(アルク 創業者)辻村氏 (ウェブリオ社長) をパネラー、レアジョブ 社長 中村をモデレーターとして、パネルディスカッション形式で開催。

辻村氏はいう、「英語には、ビジネス英語と受験英語の2つがある。いい大学や会社に入るためには、受験英語も効果がでる。ただ、ある統計によるとビジネスの現場では、88 %が Non-nativeの人と英語でコミュニケーションを行うことになる。それに必要な英語力は、TOEIC730 くらいで十分で、ビジネスマナーや度胸の方が重要だったりする。」

楽天の社内英語化PJの責任者である葛城氏は、
「楽天では、5 人に 1 人、エンジニアにおいては 45 %が外国籍になり、英語じゃないと会議は進まない。社内公用語化は、社員一人ひとりの自信につながり、キャリアの可能性が広がった。世界のWebサイトで使用されている言語の 55 %は英語であり、日本語は 5 %というデータがある。英語力の格差は、11 倍の情報格差ということだ。楽天では、TOEIC800 点を目標とし、ネイティブレベルを目指してはいない。

ニーズ→行動ではなく、行動→ニーズにすることで、未来への投資につながるだろう」と語る。

ByNameで仕事ができる人材、個が強い時代へ

メディアアーティスト 落合 陽一 氏「デジタルネイチャーへ」

「イノベーションを起こせる人材とは、Art・Science・Design・Enginerring の 4 つを同時に解決できる人のこと。こういう人材を育成していく必要がある。4 つは近しいようで違うが同時に考え、リアルな問題を解かないといけない。プログラミング教育や英語教育などの手法論に意味はない。どういう組み合わせで、使うかが大事。手法論は議論されるが、根本的な教育のあり方の議論はされていない。

イノベーションは最初が難しい。5 年前は 23、4 歳の修士論文レベルだった問題を、現在では、平均 15 歳ができる。たった 5 年間で 8 年分の時間が縮まったということ。この時代は、手法論を学ばせても、速度が追いつかない。だからこそ、最先端なもので、最先端なもの作って、実際の問題を解決することが重要。人にbynameで仕事をどうやってさせるかをベースに教育を考えるべき。」と語る。

この 4 つの使い手で問題を解決できる人材は、非常に希少だが、企業においても、エンジニアがデザインを学んだり、デザイナーとマーケティングのポータブルスキルを複数もつ人材が増えてきている。いい意味で枠組みにとらわれない鈍感さと好奇心が必要で、課題解決をやり遂げるタフさが、新しいキャリア形成には必要なのだろう。

学校教育の現場で今起きていること

変革を目指しチャレンジし、民間と連携していく

「イノベーティブな校長ネットワーク」 小高校長(戸田第二小学校)、高橋校長(西山中学校)、日野田校長(箕面高等学校)、工藤校長(麹町中学校)をパネラーとして、前原小学校 松田校長がモデレーターにてパネルディスカッション形式で開催。

「学校の最高責任者は、校長。校長は確かな時代認識をもち覚悟をもとう。」と松田校長先生は語り始める。

会場でもある麹町中学校の工藤校長先生は、取組みを次のように語った。
「社会とシームレスな学校を作りたいと、社会に開かれた教育課程をおき、社会で再現できるスキル、社会へのモチベーションのメソッドを作っている。例えば、JTB と組み、JTB に旅行プランを提案するなど企業と連携した体験型の学習をしている。基礎学習だけでなく、フレームワーク、思考ツール、プレゼンテーションの学びの場になっている。放課後はアフタースクールとして、部活動だけでなく、学校内で塾を立ち上げ企業と連動し、社会で活躍しているプロの方にカメラや水泳やプログラミングなどの講座の選択肢もある。生徒だけでなく、参加している教員も学んでいく仕掛けづくりをしている。」

登壇した 4 つの小学校に共通項は、学校と企業がそれぞれの強みを生かし連携し、教育の新しい在り方を作っていこうという意思だ。登壇者の「 PDCA の P だけを作っている場合ではない、P を作っている間に状況が変わるからだ」との言葉に、その通り!と会場からも声があがり、教育者、技術者、経営者がみな首をうなずいていた。

主体的に学ぶ力が大事

「AIは教育にどう活かせるか、教育をどう変えるのか。」

「テクノロジーが入ってくる未来では、人工知能に置き換えられる職業と置き換えられない職業がある。AIに仕事を奪われるという捉え方もあるが、これはポジティブかネガティブか」とリクルートマーケティングパートナーズの小宮山さんの会場への問いかけでスタートした。(来場者の大半がポジティブ)

アダブティブラーニングの技術を活用しタブレットで数学を学ぶサービス「RISU」の加藤さんは、「導入している学校の先生からはポジティブな意見ばかりではない。先生の教えるという Teaching の仕事を奪っているように見えるからだ。AI は、人によって全然受け入れ方が違う。

先生の8割が算数を教えること、生徒の4割が算数ができないことに困っている。これは、室町時代がわからなくても江戸時代はわかる社会とは違い、数学は積み上げ式だからだ。同じ年齢で同じことを学ばないといけない教育現場とは違い、一人一人のニーズによって違うコンテンツを提供することができる RISU では、小学校 6 年間で学ぶ算数の内容が 3 年くらいでできるようになる。余った時間は、コミュニケーション力を養ったり、遊んだりすればいい。最近の学校はやることが増え、先生も生徒も時間がなくなってきているので、学習の効率化をしないといけない。」と語る。

学ぶ選択肢は増えている。だからこそ、主体的に学ぶ力が大事。知っていると実際にやるで差が生まれる時代であることを、再認識した。

オンライン学校のリアル

「学校の再デザイン」

教育や社会の課題を捉え、テクノロジーを活用したオンラインの学校が日本でも開校され、話題になっているが、どのような取り組みをしているのだろうか。

第一学院
「全国のキャンパスをオンラインテレビ会議で繋ぎ、アクティブラーニングを始めた。SNS に似たようなツールで、自分を表現でき、色々な異なる価値観の共同学習を通して学ぶ。義務教育を十分に受けてこなかった生徒など、多様な生徒がいる中で、1分の1の教育を追及している。もっと自分を好きになり、自分を作ることが重要。」と第一学院の竹下さんは言う。

KADOKAWA×ドワンゴのN高
開校1年半で生徒数は4477名というN高。
「同調圧力を訴える中学生が増えている。今の教育にうまくなじめない生徒がいる。知識の引出しが多いことが社会で活躍できる時代もあったが、スマホが普及した時代だと、それが正解ともいえなくなってきた。従来の学びの環境が合わなかった生徒から『N高みたいな学びがあるなら通いたい』と声が上がっている。多様な学びができる場所だと思う。

N高のテクノロジー活用は大きく2つある。1つ目は、Slackが標準ツール。Slack内でホームルームを開催するなど、コミュニケーションが生まれている。2つ目は、双方向の生放送サービスであるN予備校のアプリ。大学受験の勉強や小説家のコンテンツなども用意している。いい授業の条件とは、①圧倒的に先生の教え方がうまいこと②子供たちが自主的に参加すること③相互刺激/仲間との刺激、この3つをネット上で再現した。」と語る。

ミネルバ大学
「世界が情報でも物理的にもつながっているが、異文化体験をしている大学生は2%と言われている。そのうちの大半は北米とヨーローッパでの体験だ。複雑な世の中になっているのに、異文化体験が偏っている。」と課題を提起する山本さん。

「ミネルバは、教室という場所の成約がなく、先生・生徒はどこにいてもいいが、異文化体験は濃密に行っている。授業はオンラインだが、世界の7都市に行き、企業とのプロジェクト学習を通して、インプットとアウトプットを行っている。授業の90分のうち80分は、学生同士のインタラクションで進み、誰がどれだけしゃべっているのかをシステムで可視化し、授業が進んでいく。オンラインのメリットの一つとして、先生がどれだけ効果的に教えられたかが分かる。普通の学校だと直感や主観で先生同士でフィードバックしているが、我々は、事実を元にフィードバックすることができる。」

ミネルバでは、今年初めて日本人学生が誕生したとのこと。オンラインの学校は、コミュニケーションデザインが緻密に設計されており、コンテンツをオンライン上に乗せるだけではなく、人間のウェットな部分への取り組みが進んでいると感じた。社会の早い変化に近づく教育の必要性を捉え、自らの経験を通して身に着ける「アクティブラーニング」を通して、コミュニケーション能力や思考力を鍛えていく流れは、今後加速するだろう。

まとめ

今回のイベントでは、「生徒、先生の時間を取り戻す」と「時間」に対する課題を発言される登壇者が多かった。

会場で席が隣だった保護者からは、プログラミング、英語、ダンスの必修の増加、若年化に加え、両親の共働きが増えたことにより、子供に習い事を複数させることが増加していることも、子供の時間がなくなっている一要因だろうと伺った。

時間がない社会背景と教育のテクロノジー活用が進むことで、
学習の個別化、最適化は進み、1人1人の個がフォーカスされる時代は加速するだろう。
学校の多様性、学びの多様性を実現し、子供が選択肢を広げられる教育を実現することは、社会全体で多様な個性の人を受け入れる必然性に繋がる。

教育が変革すると、同質性の高さを求める日本企業も変わらないといけず、
これは、新しい日本文化を作っていくことかもしれない。

教育とテクノロジーのかかわりは多様かつ複雑だと思う。
でも、複合的な要素を教育者、技術者、事業家、自治体がスクラムを組み、

「生徒が、自主的に、夢中になれることを始められるような教育を作っていこう」

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