働くひと

仕事に感じる漠然とした「違和感」が、人生の選択における重要なサイン。レアジョブ人事のトップが考える、自分とキャリアへの向き合い方。

 

秋岡 和寿
神戸大学経営学部卒業後、2002年住友電気工業株式会社に入社し、法人営業、生産/業務企画に従事。その後、株式会社グロービスにて法人営業、人材育成・組織開発コンサルティングに従事。グロービス経営大学院にてMBAを取得。2014年よりピクスタ株式会社にて組織開発室長、経営企画部長、戦略人事部長を経て、執行役員就任。2021年6月に当社へ入社し、執行役員 CHRO就任。

 
誰しも、仕事に対して漠然とした違和感のようなものを感じることがあると思います。僕も、キャリアを振り返ってみるとそういった正体不明の「何か違う感」に何度か繰り返し襲われていて、それがなんと、40歳を超えた今でも続いています。

違和感への対処は人によってさまざまなように見えますが、大きく分ければ2つしかないのではないかと最近は思っています。気を紛らわせたり愚痴を吐き出したりすることで「気にしないようにする」か、考え詰めて「思い切って何かを変える」かです。

僕は、常に後者でした。一言で言えば、それがそのまま自分のキャリアになっています。

違和感を覚えている時は、何か必要以上に焦ったり、本質的ではない時間を過ごしたりしている感覚になるものですが、その違和感に導かれて環境を変えてきた自分としては、そういったネガティブな感情も含めて非常に重要なサインだったように思います。

仕事に何か思うところがある人達の参考になればと願い、これまでの自分の葛藤や選択を振り返ってみます。

 

 

新卒で入社したのは、住友電気工業。社会の根幹を支える仕事がしたいと漠然と考えていて、当時学生なりに考えた結果、インフラを担う会社がそれに該当すると思って入社を決めました。

実際に働きはじめて数年が経ち、本社勤務の営業と工場勤務の生産企画・生産管理の仕事をする中で、徐々に「何かおかしいぞ?」と思うようになります。仕事における、最初の“違和感”です。

本社の企画の人間は、社内の政治的な動きを気にし、綺麗な戦略を描く。現場は「また本社の人間が何か言ってるよ」とシラけたムードで耳を貸さず、自分たちにしか分からない現場のリアルがあると決め込む。その結果、物事は何も前に進まない。

なんで、こんなに本社の人と、現場の人が、食い違うんだろう?と思案に暮れました。皆、別に「悪い人」というわけではないのに、やる気がないわけでもないのに、しかし状況は一向に変わらない。

何か、大きな組織に蔓延する不気味なカラクリにより物事が進まない構造になっている。何か本質的ではないことが起こっている。それにモヤモヤし、目を潰れない程の違和感となっていくのを感じていました。

これらの過程で、人がなぜそうするのか?なぜやらないのか?なぜそうあるのか?といった、人の行動や心理や思考にすごく興味を持つようになったんです。また、その延長で「組織マネジメント」に関心を持つようになりました。

この時に抱いた違和感により、人材・組織という領域にシフトしていきたい、と思ったんです。転職活動の中でグロービスを紹介され、こういった自分の疑問に対して何か回答が得られると思い、そのまま転職しました。

 

 

グロービスでは、法人向け経営人材育成・組織開発コンサルティング、法人営業に従事しました。

自分が希望していた領域で、興味のある事柄を扱い、知的な刺激は十分でした。仕事は厳しいこともたくさんあったんですが、やりがいある案件や優秀で気持ちのいい素敵な仲間にも恵まれて充実感とやりがいを感じながら仕事をしていました。働きながらグロービス経営大学院に通いMBAも取得しました。

仕事にのめり込み9年の月日が流れたのですが、グロービスでのコンサルティングの仕事をやればやるほど、不思議な感覚に襲われていきました。「手触り感」の不足です。

どれほど本気で取り組もうとも、コンサルタントはあくまで伴走者です。実際の行動と結果については当事者であるクライアント企業に委ねざるをえない。責任を持って、自分が結果を出すことまでやり切るという強い実感を欲するようになっていきました。

これがキャリアにおける、2回目の違和感です。ポッと現れた違和感は、気を紛らわせても消えることはなく、徐々に肥大化していきます。そんな折に、同僚からピクスタ代表の古俣さんを紹介されました。

当時急成長で一気に40名規模になって組織混乱が起こっていたピクスタの組織づくりについてアドバイスを求められ、ここに何か自分の探しているものがあるのではないかと思い、2カ月程、勉強のつもりもあって無料でコンサルティングに入りました。

濃密な時間を過ごし、経営陣と議論する中で組織課題を中に入って解決してくれないか?とお誘いを受け、その場の直感で意思決定しました。(年収は減りましたが。笑)

自分の中で漠然と感じている「違和感」を解消する、そのために環境を変えていく、という選択です。

 

 

ピクスタには7年間在籍し、組織開発室長、経営企画部長、戦略人事部長を経て執行役員を務めたのですが、まあ、怒涛の日々でした。入社直後、東証マザーズ上場に向け、経営と現場の信頼関係の再構築を図り、組織を立て直します。

その後、ベンチャーの成長(40人→120人)を支え経営の質を高める組織基盤・組織文化づくりを執行役員 人事責任者として牽引しました。

上場前の組織の立て直しに1年、上場後5年が過ぎ、新規事業や海外事業などのチャレンジの結果が出て、会社としてのチャレンジサイクルがグルっと1周し、自分としてもピクスタで色んなチャレンジをして成功も失敗も含めてある程度やりきれた感覚がありました。

当初コンサルタント時代に欲していた手触り感、リアリティは、これでもかというほど感じることができたなと満足していました。

ちょうどこの頃40代に突入しはじめていたのですが、ふと、人生の折り返し地点に入ったなという感覚になります。働き始めて約20年。残りの仕事人生、少なく見積もってもあと20年。

これからどう生きていきたいか?どう働いていきたいか?と改める考える機会が増えてきました。その頃に、一歳違いの前職の同僚が病気で亡くなってしまったことを知ったショックも、そういった思考のきっかけになっていたと思います。悔いなく、毎日を一生懸命に生きないとな…と、真剣に思い始めます。

これまでのキャリアにはやりがいと充実感がありましたが、今度は「もっと自分が価値を感じられるドメインがあるんじゃないか?」という違和感が出てきました。「自分が残りの時間を投下すべき分野は、何なんだろう?」と。

そんな折に、子供が中学受験のタイミングを迎え、子供と向き合う中で、受験勉強とは何か?何が本質的に大事なことは何か?ということにも向き合う時間が増えます。それらの思考の結果として、教育というドメインに、非常に強い興味が出てきたんです。

自律し自ら学んでいく教育のあり方、それを育む環境を作ったり、選択したりしていくこと。その重要性を強く感じるようになり、そこに自分は関わりたいと思います。教育のあり方次第で、子どもひいては大人も、可能性を拓き開花させていくことができるんじゃないか、と。

僕のキャリアはこのように、環境によって自分が感じる「違和感」が起点となって連鎖していきました。
自分が心の奥底で感じていることは、漠然とした感情となって自分にサインを示します。それを排除することなく、徹底的に向き合ってみた結果と言えるかもしれません。

 

 

自分の考えも、環境も、常に変わっていく。例え、かつて自分が望んでいた場所でいつか違和感を抱いたとしても、それは悪いことでも何でもなく、自然な変化なのでしょう。

そういう意味では、いつか、レアジョブに何か違和感を抱く時が来るかもしれません(笑)でもそれは、自分やレアジョブが変わった、いや「変われた」ということ。そんな日が来るのを、少し楽しみにしている気持ちもあります。