働くひと

人はどのように「成長」するか? −レアジョブ取締役に聞く

 
 

安永:株式会社レアジョブ 取締役
深井:プログラム開発部 部長。大手英会話教室で学習アドバイザーを経験。2015年レアジョブに入社、オンラインカウンセリングサービスや、短期集中型英会話プログラムの立ち上げなどに従事。2021年より、日本語スピーキング力学習プログラムの開発を担う新会社・バベルメソッド株式会社の取締役に就任

「変わる」もの

 

深井さんは入社して6年が経ったところだよね。今と入社時で、何か違うことってありますか?

違うこと、ですか。6年前は、与えられた範囲の中で、自分のやることを選択していたような気がします。今は達成することに向けてあらゆる方法をとろうと考える。「仕事をする」ということが自分の中でどういうことなのかが、固まってきている感覚です。

なるほど。ちなみに、年収は?(笑)

え、年収ですか!?(笑)年収は、倍くらいになりましたかね…。ありがたいことに。

結構すごいことだよね。6年という時間を使って年収が倍になるっていう経験を、世の中の何パーセントが体験できるのかというと、実際のところほとんどいないと思う。珍しい経験をしている。

一方で、深井さんは何も「給料を倍にしよう。」と思って毎日働いてきたわけではないと思うんだ。

そうですね。あまり考えたこともなかったですね。その都度、目の前のことに必死だったというか…。

とはいえ、深井さんは実際に6年間を過ごしてきた中で、「倍の給料を貰うに値する価値」が何なのかは理解できているはずなんだよね。

倍にしようと思ったわけではなくても、実際に倍になったことでどのように過ごせばこういう結果が得られるかは理解している。

これまでのイメージがあれば、単純な話、今から6年間でまた給料を倍にすることもできるはず。どうやったら倍になるのかを、知っているから。

さらに倍ですか…。ちょっと考えたこともなかったですけど、たしかにそうですね…。今は、これから自分のやることが変わったとしても、やり切れるという感覚はあります。

僕は、詰まるところ、成長ってそういうものなんだと思っている。成長の実感って、可視化できない。だから、今あえてお金の話をしてみた。成長した結果の価値がなんなのかという指標に関して、あえて給料で考えるのがシンプルかなと思って。

金のことばっか考えて頑張れ!ではないけど、気づいたら、自分の価値として見えるようになっている。

たしかに…。

 

 

実際のところ、みんな、常にフワっといろんなことをイメージしながら働いてるんだよね。目標を聞かれれば、漠然と、「自己実現」とか「成長」とか言ってみたり。しかも、実際に仕事に向かっている時はそんなことを考えてすらいない。

だから過去を振り返ってみても、自己分析って実のところシャープじゃない。そりゃ働いていれば思い出みたいなものは増えるけど、自分自身が得たものと結果の関係性をクリアに評価することはできない。

そうですね…。

じゃあ、「成長」って言うけど、結局、何が変わることなのか。人の中で変わっていくのは、詰まるところ平等に与えられている「時間」というものをどのように使うか、ということだけなんだと思う。時間の使い方が変わっていく。

実は深井さんもそうだったんだけど、「時間の使い方」が変わったんだよね。「時間に対しての自分自身の価値の置き方」が他の人と違ったんだよ。

「成長」の原理

 

「成長」という意味では、直接こんなことを言うのもアレなのですが、安永さんと出会って相当ストレッチしたお題を絶え間なく与えていただいたことは、自分の中で大きかったと思います(笑)

わざわざ名前を出してくれてありがとう(笑)でも僕は深井さんを育成してきたなんて言うつもりは一切ないよ。

たしかに、何か具体的に「こうしろ」「ああしろ」という指示のようなことを言われた記憶はないですね。機会を与えていただいたと思っています。

上司が「育成しないと」とか「育成しなきゃ」とか言うのは、正しい表現ではないと思っている。育つかどうかは、本人の意思でしかない。

同じ時間を使ってどのようなアウトプットが出せるかというお題を与えて、できると思ったらもっとやらせる。そのフェアな関係が、「育成」の本来の関係性なんじゃないかな。

でも、中には、手取り足取りやり方を教えて…という上司もいますよね。「俺が育てる」というような。

そういうのは「育成」じゃなくて、「しつけ」だよね(笑)

 
一同:(爆笑)
 
 

おっしゃる通りですね。一方で、上司の中に「育成しなきゃ」というスタンスの人がいるのと同様に、部下の中にも成長を「させてもらうこと」だと思っている人も多いような気がします。育ててもらいたい、というような。

うん、よくよく考えると、変な話だよね。極端な言い方をしたら、「成長なんて勝手にしてください」としか言いようがない(笑)というか、そもそも成長する人間は「成長したい」なんて言わない気がするんだよね。

稼ぐために、結果を出すために、他の人を追い抜かすために勝手に時間を使っている。

レアジョブに入社してくる人にも、同じようなことが言えそうですね。

そうだね。面接をしていても、「成長したい」という人がいるけど、厳しい言い方をすれば、そういう人が簡単に成長するとは思えない。

会社に興味があるのなら、自分が実現したいことと、会社のこの先がリンクしているかを充分に確認して欲しい。それさえエンゲージメントされれば、人は勝手に育つし、その過程で会社に価値をもたらす。

っていうか、僕自身も、もう成長なんてしたくないんだよね。でもロイヤリティが低いかって言ったら、ものすごいロイヤリティがあると思っている(笑)ロイヤリティの塊。

 
 
一同:(爆笑)
 
 

 

結局、成長に対して受け身なスタンスだと、成長にもアウトプットにもつながらないということなんだよ。深井さんは、これまで自分の成長がどうのこうの何て、考えたことある?

そうですね。自分を振り返ってみても、ただ、ひたすら目の前のことに必死だったというか…(笑) その中で、気づけば少しずつ変わってきたのかなと。振り返って思うくらいですが。

実際、私の最初の頃ってどうだったんですかね?何をやるにしても全然ダメでしたよね…?

うん、最初の頃の深井さんは、時間の使い方が今と全然違ったと記憶してる。端的に言うと効率があまり良くなかった。僕の言ってることも充分に咀嚼できていなかったと思うし、求められていることも高くて、キツかったと思う。

ただ、深井さんは悩んだり、怒ったり、泣いたりしながらとにかく愚直に目の前の出来事に向き合っていたんだよね。

怒ったり、泣いたり…。昔のこととはいえ、改めて、恥ずかしいです(笑)

小学校の運動会で順位をつけない、みたいなやり方が会社にも蔓延しているよね。うちの会社もS~Fの評価があるけど、誰がS評価なのか誰も知らない。競争原理みたいなのが使えなくなっている。頑張るモチベーションを知らず知らずのうちに制度で削がれていってるんだよね。

そんな中で、深井さんはものすごくエモーショナルな仕事の仕方をしていた。そこまで真剣に向き合う人って中々いない。だから見込みがあるなと思っていた。そして実際にそれぞれのステージで結果を残してきた。

ありがとうございます。

今回、新会社の取締役に任命させてもらったのも、別に取締役ができるからということではなくて、取締役に必要なことができるようになると思ったから。

これまでの6年の時間の価値を正しく認識できていれば、これからの6年も同じように価値を出すことができる。冒頭の話に戻るけどね。

「機会」の認識

 

そういえば、自分が部下として安永さんと接してきて、ありがたいことに色々チャレンジさせてもらえたなと感じているんですが、一方、自分が部下と接していて機会を与えるのも簡単ではないなと常々感じています。

自分なりに機会を与えているつもりでも、チャンスをチャンスとして捉えてもらうことが中々できない、といいますか…。

単純に「機会を与える」と上司の仕事を説明したけど、機会を正しく与えるためには色々な要素が必要になってくると考えてる。まず、上司は機会をただ与えるだけじゃなくて、徹底的に「言語化」にこだわらないといけない。

言語化、ですか。

さっきも言ったけど、ほとんどの人はフワっとしたことを考えながら働いてるよね。「自己実現」とか、「成長」とか。5年後にどうなりたいか聞いても、「頼られる人になりたい」とか。言語化が甘くて、自分自身のぼんやりした感覚をそれっぽく表現しているだけになっている。

自分がどうなりたいのか、その目標と今の目の前の仕事がどうリンクしているかという言語化にこだわっていないから、目の前に転がっている機会も機会として認識できないし、そもそも動機が曖昧だから頑張れない。

たとえば、スタート地点は「幸せになりたい」とかそれくらい抽象的でも良いと思ってる。どうなることが自分にとっての幸せか、どんどん言語化していくことが大切だよね。

なるほど。

 

 

みんな、言語化することの価値を甘く見積もっていると思う。常に、あらゆることに対してやり過ぎなくらいに言語化を徹底しないといけない。

取引先を前にして「持ち帰って検討します。」みたいなことを言う上司がいるけど、それは持ち帰らないといけないくらいしか考えていなかったと言っているようなもんだよね。

そういう人はマネージャー職に向かないだろうね。人が育つ環境では、上司は常に言語化にこだわってる。異常なほどに。

たしかに…。

それと、上司も部下も、会社における「自分の役割」を正しく認識している、ということが必要になるよね。今会社はどこに向かっていて、その中で自分が何を担っているのか、何を期待されているのか。

深井さんは、レアジョブで、英語学習のカウンセラーから始まってさまざまなポジションを経験して、今は子会社の取締役に就任しながら日本語を教えるプログラムを作ってる。会社に求められることは相当変わってきたね。

そうですね。立場が変わるたび、今までの感覚を捨てないといけないな、と思います。

会社は身体みたいなもんで、それぞれの人が自分の機能を果たさないといけない。眼だったら、視覚的情報を取り込む。耳だったら聴覚情報を取り込む。脳だったら情報をもとに判断する。それを正しく認識できていないと、「機会」を、正しく「機会」だと認識することができない。眼の人が、「なんか臭いな」みたいなことは言わないでいいんだよね。鼻じゃないんだから。

 
一同:(爆笑)
 
 

「機会を与える」というのは、言葉にすると簡単だけど、実際にはそういう上司の取り組み方が必要不可欠になってくる。部下も同様だけど。

育成できているのか、ということを考えるにあたっては、上に立つ者は「正しく機会を与えられているのか」ということ視点で、下の者は「正しく機会を要求できているか」という視点で考えてみることが大切になる。これが、レアジョブの、基本的な育成に関する考え方だね。

ありがとうございました。今日は、改めて安永さんの考えを聞けて良かったです。色々なことが自分の中で整理されました。

6年後、深井さんがどうなっているか、楽しみにしています。