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「TOEICの点は取れるが英語は話せない」僕が海外で外国人をマネジメントする時に取り入れた、5つの工夫

 
 
28歳の若さで海外子会社のCEOに抜擢され、2021年現在では海外子会社3社のCEOとして、500人近いスタッフを率いて経営を任されている水島さん。
今でこそ難なく現地スタッフを束ねていますが、海外赴任が決まった5年前は、ほとんど英語が話せなかったとのこと。

「英語が話せない人間」が海外で外国人のマネジメントに携わる際、どのような点を念頭に置くべきか。外国人の部下、そして自身の英語力との向き合い方の本質を聞きました。

 

TOEICで点は取れるが、英語は話せない

当時の英語力ですが、まさに典型的な「TOEICで点は取れるが英語は話せない(スピーキングはCEFRのA2程度)」という感じでしたね。

学生の頃少し留学していたこともありTOEICのスコアは930点でしたが、実際のビジネスの場では全く通用しませんでした。

最初に痛感したのは某外資系メーカーの「1週間英語のみ」という形式のインターンに参加した時で、HRトップのロシア人に「良いんだけど、英語がね…」と率直に英語力のダメ出しを受けました。

次に前職、Googleの時です。上司がフランス人とイスラエル人だったことがあったのですが、話すスピードは速いし、単語も難しかったので、完全に理解することができないことも少なくありませんでした。

幸い、営業職だったので日常業務への支障はそこまでありませんでしたが、同期に帰国子女が多くいる中、自分は英語がハンデとなりうる状況に「今後のキャリア戦略として、英語を使うフィールドで戦うのは避けよう」とまで考えていましたね。

そんな状態でありながら、レアジョブに入社した2016年に、そのままフィリピンのカガヤン・デ・オロに赴任となりました。

今改めてこの5年間を振り返ってみて、自分としても価値があったと確信が持てる5つの取り組みを紹介します。

ポイント①:赴任初日に、徹底的に「自分」という人間についてのオリエンテーションを行う

まず赴任した初日に、徹底的に自分という人間について部下にオリエンテーションを行いました。

「今話して分かる通り、自分は英語が得意ではない。」とまず正直に伝え、「さらに異文化で働いていくことになるが、フィリピンの文化・価値観についても分からない部分が多い。徐々に理解してキャッチアップしていきたいと思っている。」という旨を説明しました。

その上で、「しかし、ビジネスで来ている以上、短期間で成果を出さないといけない。そのため、言語や文化を超えた世界共通の言語である“数字とロジック”で基本的には話を進めていこうと思う。その中で、これはフィリピンの文化や価値観的に受け入れがたいといったものがあれば、どんどん指摘してほしい。」と話しました。

また、「英語が完璧ではないが、内容やニュアンスは正確に伝えたいと思っている。だから、その場で即答して完璧に伝えきる自信がないことについては一度持ち帰らせてもらい、しっかりと伝わる英語を準備した後に再度説明させてもらう。」と伝え、当時の私の英語力の中でチームとして機能するために必要な方針を明確に共有しました。

リーダーシップの第一要件は「自らの意図を明らかにする」ことだと考えており、異文化でマネジメントをするに当たっては特に重要なポイントの一つだと思います。

ポイント②:重要な話に関しては、完全なスクリプトを用意する

重要な発表、難しい意志決定を伝える、解雇する時など、微妙なニュアンスが大切になるシーンでは、都度スクリプトを用意していました。

要点をまとめる際に、箇条書きにして内容をまとめている人が多いと思います。しかし、接続詞や途中の細かい表現などでニュアンスは変わってしまうので、自分の場合は“全書き”で用意するという方法をとっています。これは、こちらから伝える内容だけでなく、想定される質問への回答も事前に全書きで用意します。

何をどのような表現で伝えるかを完全に書き出し、直属の部下やウェブサービスで自分の英語が正確かどうか、伝えたいニュアンス通りなのかを確認していました。そうして書き出したスクリプトを丸暗記するという事前準備を毎回の話し合いのたびに行っていました。

何かあるたびにA4用紙1枚くらいの量のスクリプトを用意するというのは、確かに大変です。それに一見、非効率的に見えますが、実際のところ異文化の中で働く際の仕事上のトラブルというのは、非常に微妙なニュアンスの違いなどの小さなミスコミュニケーションによって発生するものだと思っています。

たどたどしいアドリブで進めて問題が発生してしまってから都度片付けるよりも、問題が起こらないように事前に完璧に準備をした方が、トータルでみた時の効率は高いと考えています。問題が一度発生してしまってから、低い英語力で解決するコストは計り知れません。

また、スクリプト作成を繰り返すことで英語力の向上にもつながり、自分の伝えたい表現がすぐに浮かぶようになってきます。

ポイント③:「紙」を使って説明する

何かを説明する際に、紙に書きながら説明する、というものです。驚くほど効果があります。

そもそも言葉はイメージの共有なので、自分の頭の中にあるイメージを絵として書き出しながら説明することで、伝わりやすさが格段に上がります。

また、どのようなものを作ってもらいたいか、というアウトプットのイメージを紙にそのまま書きながら説明することになるので、一通り説明した後にその紙を相手に渡しておけば「あとはそれを作ってもらうだけ」という状態になります。
指示の出し方として最も効率的です。

色々なツールで溢れている世の中ですが、特にイメージの共有が重要になる海外でのマネジメントというシーンにおいては、古来より伝わる「紙とペン」が引き続き最強のツールだと確信しています。

ポイント④:格好つけずに、一語一語、丁寧に話す

英語を速く話せることが格好良いと思っている人は多いと思いますが、僕はあえて一語一語丁寧に発音できるスピードで話すことを心がけていました。

これに関してはあまり細かく説明することもないんですけど、速く話すメリットって本当に何もないと思うんですよね。速く話そうとすることで細かい英語のニュアンスは崩れますし、相手にしても、母国語でない人の英語がさらに速かったら聞き取りにくいですよね。

逆の立場になって、片言の日本語を話す外国人がいたとして、「片言だけど早口でなんか日本語を話せてる風な人」と「ゆっくりと正確に日本語を話そうとする人」と、どちらと会話したいと思うか、ですよね。

なんか丁寧に正確に話そうとする人の方が頑張ってる感じがするし、最後まで付き合ってあげたい、フィードバックを出してあげたい、と思いませんか?(笑)

ポイント⑤:「言いたいけど言えなかった表現」は、メモしておいて、1日の終わりに全て調べる

最後に、英語の勉強方法の話です。

海外駐在あるあるとして、駐在したのに全然英語力が上がらなかったというのをよく聞きます。駐在期間は日々の業務に忙しく、また異文化の中でストレスが溜まるので、空き時間に勉強をする気力が湧かないというのはよくあるかと思います。

そんな中でも、1日5-10分でできて非常に効率的に学べる方法を紹介します。それは業務や日々の生活のなかで、言いたかったけど言えなかった表現をその都度書き留めて、一日の終わりに調べるという方法です。

英語で話していると、会話中に「あ、これ言いたい!」と思うことがあるんですよね。でも、表現が出てこないし、会話の流れを止めてその場で調べるようなことでもない。「言いたいけど、言えない表現」というものが出てきます。

それを携帯にサクサクとメモしておいて、寝る前に検索をして、「ああ、あそこでこの表現を使えば良かったのか!」という風に学んでいくのは非常に効率的な勉強になります。

また、調べて終わるだけでなく、最低20回は口に出して練習すると、次からは自然とその表現が出てくるようになります。

ただ闇雲に参考書で英単語や表現を覚えていくのとは違い、自分が実際に遭遇した場であるため明確なイメージが脳内にある上に、言いたいけど言えなかったという悔しさが残っているので、記憶への残り方が段違いです。

またすぐ似たような場面に出くわしたらすぐに使えるので、長期記憶にも残りやすい。非常にオススメです。