働くひと

「ワンマン」「人見知り」「不器用」「口べた」の4人で構成された営業成績最悪チームが、社内トップの成果を収めるまでの軌跡。

 
今回紹介するのは、とある営業チーム。社内で最悪の営業成績からスタートしながら、1年の時を経て社内トップの成果を残すまでに至ったその軌跡を聞いた。
 
どん底だった営業チームは何を考え、どのように変貌を遂げたのだろうか。


 
2017年の10月、東京第一チームが立ち上げられた。法人事業部の営業として企業に訪問し、レアジョブの英会話サービス契約を獲得することがチームの目的であった。
 

松岡は根っからの営業マン。このチームのリーダーとして抜擢され、突如として大きめの予算(売上げ目標)を言い渡された。
杉本はチーム唯一の女性であり、営業は未経験。そして重度の「人見知り」である。
高平は、2017年の9月に転職してきた。入社1ヶ月にして、東京第一チームの立ち上げメンバーとして声がかかった。オンライン英会話に関する知識は、何もない。
矢内の入社は2018年2月。追加メンバーとして、入社後すぐにこのチームに加わった。尋常ではない程の「口べた」で、人前に立つだけで脳がフリーズしてしまう。
 
2017年10月に3人でスタートし、途中から矢内を加え4人になった東京第一チーム。2018年3月までの半年間、ガムシャラに企業への営業訪問を重ねた。そのほとんどが、新規顧客である。

営業の流れとして、HPからの問い合わせ、もしくは商談先を獲得するインサイドセールスチームからパスをもらった訪問のアポイントが、各営業チームに振り分けられるのだ。

立ち上げ当初を振り返ると、若手や社歴の浅いメンバーが多く、一言で言うと“東北楽天ゴールデンイーグルスの創設期”に近いものがあったと松岡は言う。

右も左も分からず、全員が必死に目の前の仕事をこなしているが、全く成果が上がらなかった。
 

 

メンバーは僕が選んだんですが、実際にスタートしてみると余りにも上手くいかないので唖然としましたね。皆がバラバラと営業に出かけるのですが、それぞれ何かしらの問題を抱えていて、とにかく成約率が異常に低い。

そんな現状に焦って、出来る限り自分で数字を出そうと僕自身も一人でお客様を回って…という感じでした。チームとしては本当にバラバラだったんです。というか、チームではなく、個人商店の集まりという感じでしたね。一人ずつ個別に営業へ出た方が、コンタクトできるお客様が増えて効率が良い。そう思っていたので、自然とそういう形になっていたんです。

 

 

良い経験になるという会社の判断だったとは思うのですが、法人営業の経験がなかったうえに、私は極度の人見知りだったので本当に地獄でした。そもそも根本的にベースとなるトーク力がないので、お客様のところに言っても何を話せば良いか分からず、いつも変な空気が流れてしまうんです(笑)そんなことでは契約が取れるわけもなく…。

 

 

僕は、営業の経験自体はあったんですが、売る商品の性質が前職とは全く別物だったので戸惑いました。元は人材派遣会社で派遣の営業を担当していたのですが、その会社の時は業界の特性として商品自体を他社と差別化するのが難しい状態で、営業と言っても、最後は「お安くしますよ」というコストの部分でのセールストークになってしまっていたんです。

当社に入社してからも、なかなかその癖は抜けませんでしたね。レアジョブの英会話の魅力を伝えるよりも、すぐに「安くします」という話に持っていってしまうというか。

 

 

僕はシンプルに、えげつない程の口べたです(笑)商談の場になるとガチガチに固まってしまいました。緊張してしまって、全然滑らかに話せなかったです。

こうして、チームが発足した2017年10月以降、毎月大幅な予算未達が続くことになる。

半年間を終えて振り返ると、東京第一チームの予算達成率は60%という散々な結果となった。
 

 

2018年の4月に、全社員が参加して半年間を振り返る締め会があったんです。そこで、大幅未達のチームとして目立ってしまったんだよね。あれは辛かったな…。

営業チームに割り振られた予算が厳しいのは確かだったけども、私たち以外は全チーム予算を達成してましたよね。皆、予算達成で沸いている中で、私たちの報告だけ物凄いシュールな空気が流れて、トラウマになりそうでした。

締め会が終わった後、チームで飲みに行ったのを覚えています。それまではチームで飲みにいったりしたことがなく、初めての場だったような気がします。「もう二度とあんな空気味わいたくないな」という話を何度もしました。あんなに辛い経験をしたのは初めてですね。

最初の半年は散々な結果に終わってしまったが、会社が東京第一チームに寄せる期待値が下がることはなかった。

したがって、2018年4月から9月においても、東京第一チームには再び厳しい予算が割り当てられた。

これまでのような個人の頑張りだけでは、今回の目標は絶対に達成できない。チームは、抜本的に変化する必要に迫られていた。
 

 

最初の半年間も、決して意識が弛んでいたわけではなかったんです。だから「もっと気合いを入れて営業しよう」といった精神論では、何も変えられないと感じていました。チームとして、営業手法を抜本的に変える必要があったのです。

これまでは全員がバラバラに営業活動を行い、成約後のフォローも属人的になっていました。これでは、せっかくチームを組んでいるのにその強さを生かしきれていない。そこで、真っ先にこのスタイルを変えました。4人にはそれぞれ得手不得手があります。その部分を皆で理解し、認め合い「このお客様には●●さんが合うだろう」といった発想で、誰が対応するのがお客様にとって一番いいのか、と考えるようになりました。とにかくチーム全員で1件1件を大切にして、打率を高めようと思いました。

また、チームのうち、杉本と矢内は、“人見知り”と“口べた”です。営業としては致命的なようですが、こういった「苦手なことを克服してできるようになろう」という考え方もやめました。苦手なことを治すのは難しいし、本人もストレスが溜まりますから。

もはや、人見知りでも口べたでもOK!その代わり、自分の強みを理解させ、とにかくそこの領域では圧倒的一番になれるように指示を出しました。得意なと分野を異常な程伸ばしてもらおうと思ったんです。そのベースにあるのは、一人で全てをこなすのではなくて、“みんなが得意とする領域の中で集中的に営業活動を行う”という考え方です。そして、僕は単独で営業に出るのを止めました。それぞれの同行者として付いて回り、2人体制で営業をかけていくことにしたんです。

松岡は、まず、杉本を何か一つの分野における圧倒的なプロフェッショナルに育て上げようと考えた。杉本は、トーク力はないが、英語が堪能だった。

そこで、杉本には“デモレッスン”のプロになってもらおうと舵を切る。
 

 

デモレッスンというのは、実際にお客様の前でオンライン英会話を受講して見せるプロセス。営業の現場では絶対に必要になります。松岡からは「とにかくデモレッスンだけは業界でナンバーワンになれ!」と言われました。

通常、デモレッスンは約10分程度で終えるのが普通です。その短い間で、どのようにレッスンを受けるのか、どのように教材を選ぶか、先生の音声を聞くボタンはどこか、というようなことを伝える。実際に使っている時の感覚を味わってもらうんです。

 

 

このデモレッスンの時間でお客様を一気に引き込めるように、私はこの10分間に命をかけることにしました。実際にフィリピン人講師と会話をしている時もわざと色々な部分で間違えて、それを訂正して貰うプロセスを見せます。その一連の流れも、徹底的に練習しました。

お客様の気持ちになった時に、必要な情報は何なのか、それを追求したんです。その結果、マイページの見方を分かりやすく説明したり、どこをブックマークしておくと日常的に便利なのか教えてあげたりと、デモレッスン中に伝える情報の質がおのずと高まっていきました。

 
デモレッスンで自信をつけた杉本は、次第に自分にあった営業の方法が見えてきた、と言う。
 
 

デモレッスンで成果が出てきた頃から、お客様の話に対してテンポよく反応したり、軽快にトークをしたりするのだけが営業ではないんだと思うようになりました。

駆け引きをするのではなくて、お客様の信頼を獲得して懐に入っていく…というやり方が徐々に身に付いてきたんです。

こうして、杉本の営業成績はみるみる内に上がっていった。次は、矢内である。
 
 

 

矢内の口ベタは、杉本の人見知りの比ではありません。何度も一緒に商談に行ったんですが、商談の場になるととにかくガッッチガチに固まってしまって、大仏のようになってしまうんです。先方も怖かったと思いますね(笑)

でも矢内は、尋常ではない程にお客様ファーストの気持ちがあるんです。全ての行為は「お客様のためになっていることなのか?」を中心に物事が回っています。そういう風に考える営業マンは多いですが、それを本気で体現できる人間は果たしてどれだけいるのだろうか?それこそが、矢内の大きな強みだったということです。

あと、矢内は他の誰よりも細かく仕事をしてくれるし、準備の量も物凄いんです。僕が、「これやっといて」と言えば真っ先に矢内は手を付けてくれますし、お客様にプレゼンしに行く時なんて、相手が3人しか来ないって言ってるのに資料を10部くらい持ってくんですよ。そして10部全てに何かの目印なのか付箋を細かく貼ってるんです。異常ですよね。

僕は、相手が3人なら3部丁度しか持って行かないタイプ。なので、最初は「何をやってるんだ」と思っていましたが、やっぱり絶対に抜け漏れがないように、細かく細かく相手のことを考えて仕事をしてくれる人って、本質的な信頼感があるんですよね。

そこで「もう相手に説法してオンライン英会話を売ろうなんて思わなくていい。口ベタはある種“ネタ”にしてしまって、でも何でも細かくサポートしてくれる人なんだ…ということだけ相手に伝わるように意識してくれ」って言いました。

 

 

正直、相手に営業をしようと思うと急に上手く話せなくなる病気という感じだったんです。松岡が流暢に営業するのを見て、物凄いな、と。

矢内さん、英語の発音もめちゃくちゃ悪いもんね。とある説明会で矢内がフィリピンと言おうとして「フゥウ〜〜イリピ~ン」と言ってるのを聞いて、向こうの担当者は肩を揺すりながら必死に笑いを堪えてました(笑)

はい。そして、そういったことを意識すればするほど、パニックになって声量もメチャクチャデカくなるし、頭が真っ白で何を話せばいいのか“スコーン“って抜けてしまうんです(笑)

 

 

ただ、相手を説き伏せるのではなく、シンプルに人として信頼してもらおうと切り替えたことで、営業の結果も大分変わりました。アイスブレイクの時間も意図的に取るようにして、自分のことを知ってもらうように心掛けたんです。

矢内の営業成績も、こうして少しずつ変わっていった。成約した後のお客様からの信頼は圧倒的に厚い。

最後の高平は、営業の経験こそあれど「オンライン英会話の営業」に慣れていなかった。レアジョブの英会話がなぜ他に比べて優れているのか説明出来ず、「〜円お安くします」という営業に走りがちだった。
 
松岡は高平とも営業先を周り、二人でコミュニケーションを取る機会を一気に増やした。
 

高平には「うちの会社の営業は、世界一簡単だ」と伝えました。だってニーズが明確だし、サービス自体の質が良い。値下げをする必要なんかなくて、相手の欲しがっている情報をきちんと与えるだけで良いんだ、と伝えました。

高平は他のメンバーと違って営業が好きで、もともと行動力が物凄かった。なので、あとは前職の癖が抜けてオンライン英会話の営業のコツさえ掴めば問題ないと思っていました。

 

 

松岡の営業を横で聞くことで、自分の中に引き出しが一気に増えたのを感じました。お客様が本当に求めている情報を、適切に出していくことが出来るようになったんです。

特に記憶に残っているのは「自分たちは英語を教えることのプロではない。だから、学習ノウハウみたいな話に終始せず、もっとリアルな現場の話をしろ」という言葉です。例えば、自動車のドライビングテクニックが超凄くても、その人は営業力も最も高いのかと言えば全く関係ありません。だから「あくまでも営業のプロになれ」と繰り返し言われました。

結果的に、レアジョブ以外でも通用する汎用的なスキルがついたと感じています。営業としての本質的な部分を学べたな、と。

こうして、高平の成約率も急速に向上していくのであった。
 
 

 

それぞれが手当たり次第営業に出かけて成果が上がらなかった時期とは、全く違うチームになっている実感がありました。最初の半年間と比較しても成約率と顧客単価が飛躍的に向上して、トータルの売上げはグングン伸びていきました。

2018年4月から始まった東京第一チームの第二期は、予算を達成できる月が多くなっていく。明らかにこれまでと雰囲気が変わっていることを、チームの全員が感じていた。
 

 

苦手なことをチームで補完しあうことによって、以前は皆が“自分には苦手なことがある”という感覚から、“自分には得意なことがある”とポジティブな気持ちで取り組めるようになりましたね。

それはありますね。僕が商談の場や説明会の場でガッチガチにかたまっていても、すかさずメンバーがフォローしてくれるので本当にやりやすかったです。適度にイジってくれますし、英語の発音が悪かったら笑ってくれます。自分は自分なりのファンクションを出そうと自然と思えました。

そういう空気がお客様にも伝わって、それで私たちのことを好きになってくれたっていう側面もあるかもしれないですよね。

ですね(笑)

高平はその後、レアジョブ法人事業部の歴史を大きく塗り替える偉業を成し遂げる。2009年から始まった営業の案件として、過去最大額となる大型受注を成約させたのだ。社内では“ギネス記録達成”と呼ばれるまでに。
 

 

嬉しかったですね。特大ホームランが出たという感じです。決まった瞬間、自然とガッツポーズが出ました。

こうして2018年9月を迎え、東京第一チームはまず不可能だと思われていた予算をついに達成してしまう。
 
 

4月の段階ではこういう結果は想像できなかったので、本当に奇跡に近いですね。とんでもないことが起こったな、と。

本当に奇跡ですよね…。

色々と試行錯誤してきたことが報われた瞬間でした。

 

 

東京第一チームが変わった最大の秘訣は、何だったのか。
 
 

やっぱり、自分の不得手に対して虚勢をはる必要がない空気感があったことですかね。素直な人が多くて、どうすればチームとして成果が出るのかというポイントにフォーカスして話が出来た。そこが一番大きかったと思うんです。

営業マンっていうのは、何もトークから知識までパーフェクトではなくても良い。自分の中に大事にしているものがあればそれで良いんだと思います。営業の形なんて一つじゃないんだから、真摯なスタンスでさえいれば絶対に何かしら、その人の“生かし方”がある。

皆がそういう根本的なマインドを良いかたちで備えていたこと。それに尽きると思います。

「失敗から学ぶこともたくさんあるけど、だけどやっぱり人は成功から学ぶものだと思っている」と、松岡は最後に付け加えた。だから、とにかく部下に成功してもらいたいのだ、と。

その為には、ただガムシャラにやるのではなく、とにかく「勝てる方法」を考えて一つずつ試していくしかないと言う。

東京第一チームの変化は、メンバーの優れたマインドに加えて、精神論に終始しないリーダーの合理的な施策が必要不可欠なのだろうと感じた。

〜終〜