レアジョブについて

エンジニア文化のふりかえり(KPT)を営業組織で実施してみたら有効だったのでまとめてみた

岩村 淳平: SIerを経て、2011年にレアジョブ参画。レアジョブでは最古参のエンジニアメンバーとして、YiiFrameworkやレアジョブ英会話全体を支える技術基盤づくり、フィリピン人エンジニアとの共同開発に従事。現在は、教育機関向けサービスを提供する文教事業部にて、プロダクト企画兼エンジニアとして、チームを支えている。営業部に配属となり、最近は、経営戦略やマーケティングを学んでいる。ゲームと瞑想が大好き。

 
アジャイルやスクラム界隈では当たり前に実施されているふりかえり(KPT)を非エンジニアである営業組織で実施してみたら、有効だったので、まとめていきたいと思います。

なぜ、やろうと思ったのか

私は、教育機関向けにオンライン英会話サービスを提供している文教事業部に所属しています。メンバーは、営業5名、カスタマーサポート1 名、そしてエンジニア(=私)1名です。

文教事業部に異動してすぐに、若手の営業メンバーから
「問題がたくさんあるんです!明日がわかりません!」って言われました(笑)。

文教事業部は、2015年に新設された事業部でスタートアップの状態であり、仕組みが洗練されている状態ではなく、今も日々改善を続けています。

個人として抱えている課題をチームとして認識できていない部分もあったので、まずは、ふりかえり(KPT)ではなく、緊急度と重要度が高い課題を見つけるために、ホワイトボードに、今の課題とアクションプランを書き出していくことをやってみました。課題を解決するアクションが少しずつ出来始めてきたところで、課題解決の進捗が、チームで見えるように、KPTをやるようにしました。

エンジニアと営業の違い

まず、出てくる意見の数と勢いが違う(笑)

エンジニアは、明らかな問題や不具合がでたなど、事実ベースで課題を出すことが得意な人は多いが、プロセスの中で課題を出すことは、あまり得意ではありません。でも営業は違う、思いがけない方向から、意見がたくさんでてきます。

もちろん、施策や営業手法などの議論もあるけど、
「ツールやプロダクトの改善が早すぎて、アップデートについていけない」
「メールのフォルダわけがうまくできない!」
「共有フォルダがぐちゃぐちゃ・・・」など

効率の問題なのか、生産性の問題なのか・・・突っ込みたくなる部分も含めて、たくさんあります。

もともと、エンジニアは、抽象化と具現化を相互に行き来することや構造化、概念化が得意なので、営業の課題に対して、エンジニアリングの発想で、たくさんの課題を棚卸しすることにしました。

ふりかえりとは?

KEEP PROBLEM TRY(KPT)を枠組みとして使い、PDCAサイクルをまわす仕組みのこと。チーム内で起きた良かったこと(Keepしたいこと)や問題、気になること(Problem)に対して、自分たちが、次からどんな行動を取るのか(Try)を話し合います。もともとスクラム開発のSprintの様に決まった期間ごとに実施していますが、非エンジニア組織では決まった期間が無いので、月次で実施しています。

ふりかえりと同じような目的で実施されているものとして、定例MTGや1on1の面談などありますが、少しKPTとは違います。

定例MTGとの違い
定例MTGは、基本的に情報共有と進捗確認が目的になりがちで、もし課題の共有をする場合は、まず本人が課題を課題として認識する必要があります。個々人の些細な問題や、ボトルネックに関しては本人から発信がなければ気が付くことが出来ません。

1対1のMTGとの違い
1対1で心理的安全性を作って些細な問題まで話してもらうには、関係性の構築が必要ですし、重要度の高い問題や、進捗確認に陥りがちです。

汎用的に実施する場合のふりかえりの効果

チームビルディングとしての効果
途中から参画したメンバーの早期戦力化や、知見の共有、新しい人が来たら、業務委託の人を含めて、必ず「新しくチームに入った方が感じる違和感はチームをより良くするためにとても価値のあるもので、既存のメンバーには無いものです。どんな些細なものでも良いので、違和感や疑問点を教えてください。」と、伝えています。こうすることで、チームのコミュニケーションが活性化されます。

問題、課題の早期発見
些細な問題や、不便を感じていることなど何でも共有してもらうことで、本当に些細な問題もありますが、結果、放置すると大変な問題を早めに検知できる場として機能しています。 (本人は気づいていなくても問題のインパクトを正しく理解している人が拾うことが出来るため。)

モチベーション向上への貢献
ふりかえりのたびに挙げた問題のうち幾つかに対して解決、もしくは進行させるため、チームがどんどん良くなっていることを全員で体感できます。

業務効率化
誰かが見つけた便利なツールや手段を共有してチームに浸透させることはもちろん、時間がかかっている処理に関して悩みなどを共有すると、他の誰かがすでに解決している場合もあるので、解決策を教えることで、チーム全体の生産性が上がるチャンスになります。

具体的なアクション

毎回ふりかえりの最初にKPTの注意事項を話し、自然にできるまで注意事項は繰り返します。

KEEP
・よかった事で、続けたい事を挙げる
・誰かの良い行動を見つけ、チーム全員で実施できる様になれば良い行動が習慣化して好影響の連鎖が起きる
・誰かの当たり前が他の人にとっても価値があるということを見つける事ができる
・単純にチームを褒める / モチベーションが上がる
・良いものをさらに良くする為には?という発想で考える

PROBLEM
・問題点として捉えると意見が出にくくなるので、意見が少ない時はモヤモヤや、気になる事を出し合う

TRY
・有効なTRYが出ない場合はPLOBLEMを分解する(なぜ?なぜ?と問いを繰り返して本質的な課題を見つける)
・チーム内で実施できるもののみにする / TRYの主語はWe、もしくはIになるように立てる

KPTが上手くいくために、まず必ず伝えること

前提条件の共有
・今までその課題について何を実施したのか
・今現在チームメンバーは期間内に全力を尽くしたうえで、最善と思われる行動をしてきた
・さらに良いチームにするためのきっかけとして、何があるかを探すために実施する

人の意見を否定しない
・心理的安全性の確保を重要視する
・どんどん意見を出し合って、チームが良くなるために何ができるか
・どうしたら良いかを全員が主体的に考えられるようにするため、自分の意見を否定されることはないと思える環境を積極的に作る

個人攻撃をしない
・誰々の〇〇が良くなかった。問題だ。など、個人を責めることはしない
・性善説に立っているので、そうせざる得ない事情や環境があったと考え、それ自体をPROBLEMとして見つけ、みんなで解決しに行く

今まで実施したふりかえり

システムチーム内のふりかえり
・リリースごとにふりかえりを実施(2週間に1回)
・開発プロセスの改善や環境改善などあらゆることを実施
・不具合を未然に防いだ誰かのファインプレーなどはKEEPとともに、本来どうしたら防げたかなど

プロジェクトごとのふりかえり
・計画からリリースまでに発生した内容に対して実施
・1ヶ月以上のプロジェクトの際は、頻度を2週間または1ヶ月に1回
・メンバーで集まり、中間ふりかえりとして実施
・現状の解決すべき課題などを現場からPMまですべての立場で洗い出す

文教事業部でのふりかえり
・1ヶ月に1回全員でふりかえりを実施する
・メンバーの専門がそれぞれ違うため、どの様な課題を抱えているかを
広く拾える機会として非常に有効だった
・また、些細な問題を拾って直ぐに解決できることであれば、その日中に解決
・難しいようならその場でMTGの設定まですることで、課題解決のスピードを非常に早くすることができる

失敗する条件

・参加者がふりかえりを時間の無駄だと思い始めた時
・ふりかえりにおいて腹を割って話せない時
・KPTがどれも出なくなった時

注意事項

・参加する人数、メンバーによって話しやすい、話しにくいという場合があるため、ふりかえりの出し方はメンバーによって変えても良いと思われる
・集団心理として、5人を超えると一部の人は意見を言わなくなる可能性が非常に高くなるので、
・消極的なメンバーがいる場合は、4人一組でKPTを出し合い、それを大きなホワイトボードに集約することで、
・意見の収集をしやすくするなどの工夫が必要 (8人以上だと必須)
・ファシリテーターは、出てくる意見に偏りがありすぎる場合は是正する必要がある
・集団で意見を聞く場合は、最初に意見を出した人の意見に近い意見ばかりでる傾向がある
(業務効率化の話を始めると、それに類推される課題がでやすい。)
・否定はせずに、例えば今回◯◯をやってみましたが、どうでしたか?など
話をふる

営業目線でのKPTを通じた効果

KPTを知らない営業メンバーもいた中でスタートしましたが、営業担当の目線では、どう感じているのか、新たな発見があったら嬉しいなと思い、メンバーにヒアリングをしました。

シェアと称賛の組織文化が生まれた
・普段思っているけど言えない不満も、罪悪感なくPROBLEMとして吐き出すことで立場の違いによるわだかまりを解決する場としても機能している
・自分で解決しなければいけない、個人的な課題を共有できないと思っていたものが、みんなで議論することで別の糸口が見えたり、助けを借りられたりして、精神衛生上とてもよい
・定期的に、個々人の課題意識&喜びをチームで共有することで、一緒に解決していこうという風土が生まれる
・上司→部下だけでなく、メンバー同士のコミュニケーションが増え、メンバーの主体性発揮が促進される

チームの運営力が向上
・課題が放置されず、進捗確認も同時に行えるので、課題解決のスピードが上がった
・各営業スタッフが抱えている膨大な処理や業務のダブリなどが可視化され、業務改善が進んだ
・営業の些細な悩みから企画が生まれ、商談のフローが効率化された
EX) 初回の無料訪問サポートを動画にすることで、66%を訪問不要になり、且つ顧客満足度も向上した
・チームで共通認識を持てるので、課題認識を持った人に対策の作業が偏ることを防げた
・チームで行うことで、それぞれの立場で違う問題点を網羅でき、解決の優先度をつけられるので、組織の成長スピードが上がった

一人ひとりのモチベーションアップと成長に寄与
・自分の取り組みを周囲がKeepに入れてくれると、モチベーションが上がる
・自分達が置かれている状況を客観的に捉えることが出来る
・良い取り組みは続けようと、より意識するようになる
・課題の深掘りができるようになった
・自分だけでなく、周りがよく見えるようになった
・営業は個人商店になりがちだが、個人で粛々とやっている仕事をまわりが把握・認めてくれていることを知ることは、営業担当の精神衛生上とても大事

明日職場で何を変えられるか

レアジョブに入社して、「誰かが決めるだろう」「誰かが現場をよくするだろう」と期待することに意味はなく、気づいたら誰かがやらないと、状態は何も変わらないことをすぐに認識しました。勉強して、課題をみつけて、今の会社の状況で、何を変えたらよくなるかを実際にやってみる。

ゆるい仕組みに見えるかもしれないですが、文教事業部のメンバーから、ふりかえりの機会自体に価値があるというフィードバックをもらえました。

今いるメンバーの能力を発揮させることが出来たことは、今時点の結果でしかないので、この結果をもっと伸ばすためには、どうしたらいいのか考え、もっともっとチームを良くしていきたいと思っています。