新しい教育

自動翻訳シンポジウムに行って感じた語学学習のこれから

3/12日(火)に開催された自動翻訳シンポジウムに行ってまいりました。
その内容のレポートやそこで感じた語学学習のこれからについて書いていきたいと思います。

自動翻訳シンポジウムは、総務省とNICT(情報通信研究機構)が世界の言葉の壁をなくすことを目指すグローバルコミュニケーション計画の一環として自動翻訳技術を進歩させるためのデータ集積して活用する「翻訳バンク」を運用する上で、最近の自動翻訳技術の動向や、研究、開発、社会実装、翻訳データの整備等に関して有識者にご登壇いただき、我が国の今後の戦略を多角的に議論するため、「自動翻訳シンポジウム~自動翻訳と翻訳バンク~」を開催されたものになります。

世界の「言葉の壁」をなくすことを目指すグローバルコミュニケーション計画

参考:グローバルコミュニケーション計画とは

冒頭、総務省の鈴木氏から挨拶がありその背景が語られました。

“2020年に日本は4,000万人のインバウンド(訪日外国人)を迎える事になります、そしてそのタイミングで東京オリンピック・パラリンピックが行われます。そこに向けて「言葉の壁」を超えるため自動翻訳を進化させていかなければならない。”

“そのため「翻訳バンク」を2017年9月に始め、オールジャパン体制でグローバルコミュニケーション計画を進めて行きたい。そして、きちんと社会実装に向けて進めて行きたい。”と鈴木氏は語った。

東京大学大学院の須藤修教授の基調講演では、実証実験の成果であったり、AI開発のトレンド、実用化されている話やAI民主化やSociety 5.0といった今後重要となるキーワードが出てきました。また、NICTのフェローである隅田 英一郎氏からは翻訳バンクの概要説明があり、下記の資料がまとまっているので是非そちらをご覧ください。

参考:翻訳バンクとは

また、「AIとデータ」のパネルディスカッションでは、
AI生成に際しての知財処理~このデータ、AI生成に使っていいの?~と柿沼 太一氏 (STORIA法律事務所・弁護士)から、AI生成の際の元データやモデルに関する権利の話や、今後それに関する条例がどう変わるかなど非常に興味深い話が聞けました。また、自動翻訳のビジネス展開において、どう自動翻訳を使ってビジネスに活かすかというテーマにて、森口 功造氏 (株式会社川村インターナショナル・常務取締役)より、オーバースペックになりがちな人での翻訳と機械の翻訳をうまく使い市場を創造していくという少し先の未来が伺えました。

徳田理事長より再度グローバルコミュニケーション計画を推進し、言葉の壁を超えた世界の実現を目指すために、オールジャパン体制で望みたいという言葉と共にシンポジウムは幕を閉じました。

実用化に向けた展示で感じた「使える自動翻訳」たち

自動翻訳シンポジウムでは、会場の後ろに自動翻訳を活かしたプロダクトが展示されており、どれも実際に使えるものたちばかりでした

例えば、同時通訳のプロトタイプで、言葉通り同時通訳のようにほぼ遅延なしで翻訳がされてゆきます。
仕組みとして発話を適切な位置で区切りそれを翻訳するという形となっています。
実際に、TEDのスピーチをこのプロトタイプにかけていましたが、本当に話したタイミングとほぼ誤差なく訳が出てくるのは驚きでした。

また、耳にイヤホンマイクを装着することで、自動翻訳を通して会話ができるという「イヤホンde通訳」というものもありました。
今回は中国に旅行に来てお土産を買うというシチュエーションでデモを行ったのですが、問題なくやりとりができました。
こちらも買い物や乗り換えなどのタスクをこなしていくのには十分な実力があると思いました。

その他にも、医療機関で使えるIDカード型ハンズフリー音声翻訳端末や案内などを多言語で伝えるメガホンヤクなど、すでに実証実験を行っているもなどがあり、私たちが実際に利用できる世界もすぐそこに来ていると実感しました。

自動翻訳があれば語学学習は本当にいらなくなるのか

今回の自動翻訳シンポジウムを通して感じた事は2点ありました。

1. 自動翻訳は僕らの生活の目前まで来ている

冒頭の挨拶や基調講演、パネルを通して自動翻訳に関する世界の事例や私たちの生活にどう結びつくかなどかなり具体的に話が出て来ました。
また、展示に触れて感じたNICTの提供する翻訳(通称VoiceTra®︎)精度の高さ、そしてそれらが実際にプロダクトとして形をなしており、実用化までがある程度見えているという事がそう感じさせる大きな要因だと思います。

すでにGoogleの翻訳などを使ったこともある方も多いと思いますが、これから先はそれに限らず、我々の身近な所で、そして多くの用途で自動翻訳を目にし、使う機会が訪れるでしょう。

ただ、そうなると私たちは語学を習得していく必要があるのか、という話になりがちですが、その答えも少し見えたきがしています。

2. 自動翻訳があっても語学学習は当分必要

結論として、これだけ自動翻訳が進んでも当分語学学習は無くならないだろうという事です。

なぜそう感じるか、それは自動翻訳が進化すればするほど「コミュニケーション」と「タスク」の違いが明確になるからです。

コミュニケーションが「意思、思考、感情」を伝えるものだとしたら、タスクは「達成したい目的を達する」事です。

自動翻訳は精度も高く速度も早いですが、それは特定条件下に置いてという条件が今はあります。
ただその状態においても、タスクという明確な目的があればその力を発揮できます。
グローバルコミュニケーション計画の目指す10ヶ国語での案内などはまさにその典型例です。

他方で翻訳デバイスを使う事でどうしても感情や思考が伝わらない部分が発生してしまいます。
これを仕事の議論や、共に暮らす人々と意思疎通する時に果たして使えるか、使うかという点では疑問はぬぐえません。

いつかその壁を超える時がくるかもしれませんが、それを待っていられるほど世の中の変化は遅くありません。
また、海外の記事ですが語学学習を通して得られるものは多く、そういった理由でも語学学習は当分の間無くなることはないでしょう。

そのため、今後は母国語である日本語、そしてより多くの人とコミュニケーションを図るためにグローバルスタンダードである英語を多くの人が学ぶと思います。
特定の言語を習得し 、残りは自動翻訳でタスク処理を行っていくという機械と人間の共存が我々のより良い未来を作っていくという事を感じたシンポジウムでした。