サンパウロ生まれ。ブラジルの大学を卒業後、広告関連の会社にてマーケティングマネージャーを務める。その後日本の大手ゲーム会社にて海外事業の立ち上げに携わった後
2014年レアジョブに入社。ブラジル事業の立ち上げに奮闘中。
インタビューをする為に雇われた、外部の人。
イーゴルさんは、レペゼン・ブラジルでしたよね?

はい、ブラジル生まれサンパウロ育ちです。
日本語がうま過ぎて驚いています。
スクウェア・エニックスで海外事業の立ち上げをされた後、レアジョブに来て再び海外事業立ち上げに携わっていると伺いました。
スクウェア・エニックスでメキシコの現地法人立ち上げに携わった後、レアジョブでも同じように海外での事業立ち上げに関わっています。ブラジルの新規事業です。4千人くらいの会社から、100人くらいの会社に来たということになりますね。
外国人の方として、日本の大企業とベンチャーを経験して感じるところをお伺いしても良いですか?2つの会社で、似たような仕事をされているので、比較し易いかな〜と思いまして。
どっちの方が良い!とかではなく、客観的に違ったと感じる点を教えて貰えればと思います。
はい、良いですよ。一般的な大企業とベンチャーの比較というよりは、あくまでその2社の比較という感じになりますが。
マーケットに入る
まず、僕のやっていたのは「新しい海外の市場に入って、新しく会社を立ち上げて事業を展開する」という仕事なんです。この点では、2社とも同じことをしていました。
はい。
ですが、スクウェア・エニックスとレアジョブで、会社の持つブランド力というのは大きく違います。スクウェア・エニックスであれば海外でも皆知っていますが、レアジョブを知っている会社は、ほとんどありません。
スクウェア・エニックスって、やっぱ海外でも皆知ってるんですね。
はい。南米でも皆大好きですよ、スクウェア・エニックス。

で、このブランド力、認知度というのは、新しいマーケットに入るに当たって本当に重要だな、と事業をする当事者として感じましたね。当たり前と言えば当たり前のことではあるんですが。スクウェア・エニックスであれば、どんな現地の会社でも簡単にアポをいれることが出来ました。
確かに、レアジョブだと、初めましてから、会社の説明をしないといけませんよね。上場しているとは言え、さすがに国外では知られていないでしょうし。
はい、怪しい会社じゃないんです、ということを説明するフェーズが入りますよね。しかも「レア」な「ジョブ」ですから、最初は人材紹介の会社かなと思われますし、けっこう大変です。
社名問題もあるんですね。
あと、新しく何かをするにあたって、資金力の差もあります。
資金力の差は確かにありそうですね、かたや超大手ですもんね。
スクウェア・エニックスの場合は既に数カ国の進出歴があり、ラテンアメリカに進出する際に最初から一定以上のチームの規模と予算が決められた形でのスタートで、予算的にも余裕がありました。
レアジョブの場合はベンチャー思考で、いかに少ないリソースで海外進出を実現できるのかが最初から課題でした。
ふむふむ
要するに、スクウェア・エニックスでは、意思次第で、潤沢にリソースが使える状況だったんです。大手弁護士の使用、現地チームのサイズ、オフィスロケーションや面積、設備、海外出張、接待費。そういったものは、申請すれば手に入りました。
それに対して、レアジョブでは常にコストパフォーマンスを気にしながらビジネスを進める必要がありました。
なるほど、そのあたりは、大企業にアドバンテージのある点ですよね。
本当に、そうだと思いましたね。
社内の協力を仰ぐ
一方、事業を実際に押し進める、となった場合には規模が小さい会社の方がやりやすい点が多々あると、感じました。
どんなところですか?
まず、レアジョブの規模であれば基本的に誰が何をしているのか把握しやすいので、社内の協力を仰ぎやすいですね。レアジョブに来て、困った時に色んなことを聞きやすいなと感じました。
規模が大きいと、そうもいかないもんなんですか?人数も多いので、探せばどこかにプロフェッショナルな人がいそうな気もしますが。

そうですね、たぶん海外展開のプロフェッショナル、みたいな人って社内にいるんだと思いますし、法務関係だとか事務手続きだとか、色々と知見のある人は間違いなく規模の大きい会社の方がいるんだと思います。
ただ、実際問題として、組織が大きくなると、組織をきっちり分ける必要が出てきてます。そうすると他の部署の人が何をやってるのかってすごく見え辛くなってきますし、会社内の最も必要としている人に効率的に協力を仰ぐのが結構難しいんですよ。
有効なリソースが存在することと、それを効率的に使える状態になっていることというのは結構違って、とにかく人がいれば良いかと言われれば実はそうでもないんです。
なるほど。
あと、社内に向けた情報の公開度というのもこの2社で結構違うと感じていて、レアジョブの場合は、全社員に向けて各部署の事業の進捗や達成度、売上げ数値等が頻繁にシェアされます。これによって、誰が何をしているのかを把握するのがとても簡単なんです。
自分の海外での状況も、だいたいの人が大まかには理解してくれている。これも良いポイントですね。
協力が仰ぎやすくなるわけですね。
エラーをして改善する
あとは、「エラーがどれくらいしやすいか」という点ですかね。考えたものを試してみて、失敗する。これをどれだけスピーディにこなせるかは、やはり違いますね。
具体的には、どういう風に違うんですか?結局、海外事業立ち上げとなれば、大企業でもベンチャーでも、そのチームに裁量があるので、同じようにトライアンドエラーしていくことになるのかな、とも思いますが。
新しいマーケットで新しい事業をやっていくに当たっては、色々なことを試さないといけないじゃないですか。その際に、最低限会社に説明しないといけませんよね。どんなトライでも、時間的・資金的なコストが発生する限りは。
はい。
その、会社への説明をする際のスムーズさが違いますね。やっぱり大きい会社だと、ビジネスの範囲が広すぎるが故に意思決定する人がこれから始める領域に必ずしも詳しい人とも限らないので、「アルゼンチンの会社だけど、支払先はウルグアイなんですよ」と言っても、「ウルグアイ?なぜなんだそれは。」みたいなやりとりが永遠と発生します(笑)
もしくは「日本のゲームのように作れないんですよ、定額のデータプランないユーザーが多いので。」と言っても「データプランがない?どうやって売る気なんだ?」みたいな(笑)
説明を求められる機会が必然と増えるわけですね。
はい。そこをしっかりとロジックでもって通して行く作業はとても大変なんです。正直、どういうやり方が正解か分からないので、失敗をスピーディに積んで行く以外、方法がない。いちいち、「これはこういう理由で試す価値があるので…」とやってもたついていたら、ライバルに負けてしまう事もありえます。
レアジョブがブラジルに進出するにあたっても、色んな失敗があったらしいですね。

はい。正直、思い出せば、ほとんどが失敗です。例えばレアジョブ英会話をブラジルで認知させる為に、ひたすらその辺にポスターを貼ってみたりだとか、ダイレクトメールをしてみたりだとか色々なマーケティングを試すんですが、殆どは上手くいきません。
はあ。
ですが、色々と試していると、これは効果があるなというものがいくつか出てきたりするんです。あ、このマーケティング方法はブラジル人に刺さるんだな、というものが出てくる。でもそういうのは、日本人の感覚と全然違うので、事前に論理だって仮説をたてても大して意味がないんです。
やっぱ、全然違うもんですか?ブラジル人顧客と日本人顧客とで。
もう、全く違いますよ。例えば「レアジョブ」っていう社名がブラジル人は怪しいと感じるみたいで、現地法人の名前を「ENPOWER」にしてみたり。あとは、「1レッスン150円!」みたいな感じで安さを押し出す広告をしてみたんですが、これはブラジル人からすると「安過ぎて怪しい」という印象になってしまうみたいで、逆効果だったり。
理屈で考えて正しい方法を導けるということはないです。やってみるしかない。
なるほど。
で、そういう失敗を積んで行く際に、やっぱり会社側と事業をやっている現場側との関係性が大切になってくるんだと思うんです。レアジョブは幸い経営者も若いし、「どんどん試せば良いじゃない」というマインドがあるので、そこは凄くやりやすく感じましたね。
イーゴルさんの感じた2社の違いが、何となく分かったような気がします。一長一短ですね!
それは良かったです。

では、ブラジルで待ってますので、いつでも遊びに来て下さい!